2025年5月21日の米国市場で、エヌビディア(NVDA)の株価は一時1.9%上昇し、午後の取引で136.98ドルを記録しました。これは、台湾で開催された記者会見において、最高経営責任者(CEO)のジェンスン・フアン氏が米国の対中半導体輸出規制を「失敗」と厳しく批判したことが背景にあります。同氏は、これらの規制により中国市場でのシェアが過去4年間で95%から50%に減少したと述べています。
トランプ大統領の政策転換を評価
その一方でフアン氏は、バイデン政権が提案したAIチップの世界的な輸出制限を撤回したトランプ大統領の決定を称賛しました。しかし、トランプ政権下でのH20チップに対する新たな輸出規制により、エヌビディアは150億ドルの売上損失を被る見込みであると述べています。
中東・欧州でのAI投資が新たな成長機会に
中国市場での逆風にもかかわらず、エヌビディアは中東や欧州でのAI関連投資の拡大により、新たな成長機会を見出しています。アラブ首長国連邦(UAE)では、エヌビディア、オラクル(ORCL)、シスコ・システムズ(CSCO)、オープンAIが支援する大規模なAIデータセンター「UAE Stargate」の建設が進行中です。このプロジェクトは、エヌビディアの最新のブラックウェル GB300システムを採用し、最終的には5ギガワットの容量を目指しています。
また、フランスではエヌビディアとアブダビの投資会社MGXが協力し、パリ近郊に1.4ギガワットのAIデータセンターキャンパスを建設する計画が発表されました。このプロジェクトは、フランスとUAEの政府支援の下、欧州最大級のAIインフラ拠点となる見込みです。
米国企業のAI投資が追い風に
マイクロソフト(MSFT)とグーグル親会社のアルファベット(GOOGL)も、AI分野への積極的な投資を進めています。グーグルは、生成AIを活用した新しい検索エンジン「AIモード」を米国で提供開始し、マイクロソフトはより高度なタスクを実行可能な新しいAIソフトウェアエージェントを発表しました。これらの動きは、エヌビディアのAIハードウェア需要をさらに押し上げる要因となっています。
今後の展望
メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・ライツェス氏によれば、世界中で約16ギガワットの新たなAIコンピュート能力の構築が進行中であり、これにより今後5年以上にわたり、エヌビディアにとって5000億ドル以上の新たな市場機会が生まれると予測されています。
中国市場でのシェア減少や輸出規制による短期的な影響は避けられないものの、中東や欧州での大規模なAI投資、米国企業によるAI分野への積極的な取り組みが、エヌビディアの長期的な成長を支える要因となると考えられます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA