マイクロソフト(MSFT)は、年次開発者会議「Microsoft Build 2025」において、人工知能(AI)分野での新機能を発表しました。これにより、同社はオープンAIとの関係を超えて、独自のAI戦略を加速させる構えです。アナリストたちは、これらの取り組みが企業ユーザーのニーズに応えるものであり、同社の成長をさらに促進すると見ています。
複数のAIエージェントが連携する「Copilot Studio」の強化
マイクロソフトは今回、「Copilot Studio」においてマルチエージェントシステムを導入しました。これにより、AIエージェント同士がタスクを相互に委任し、システムやチーム、ワークフローを横断して共同作業を行うことが可能になります。AIエージェントとは、最小限の人間による指示でタスクを実行するソフトウェアのことです。
同社はこの構想を「オープン・エージェンティック・ウェブ」と名付け、AIエージェントがマイクロソフトのエコシステム内で自律的に協働する未来像を提示しました。ウェドブッシュ証券のアナリストは、「これによりマイクロソフトはAIの未来をさらに主導する」と評価しています。
エンタープライズ向けの高度なファインチューニング機能も提供
さらに、マイクロソフトはCopilot Studioにおけるファインチューニング機能の提供も発表しました。これにより、開発者は11,000を超えるモデルにアクセスし、自社データに基づいてより専門的で高付加価値な応答を得ることが可能になります。
調査会社Radio Free Mobileの創設者であるリチャード・ウィンザー氏は、「Build 2025は企業開発者向けのAIサービス構築を支援するツールとサービスの提供が主軸」と指摘しました。また、これらのツールを導入することで、マイクロソフトのITソフトウェア製品の魅力が一層高まり、AI投資の収益化が進むと述べています。
マイクロソフトが独自路線を強化、リスク低減へ
ウィンザー氏はさらに、マイクロソフトがオープンAIとの距離を取り始めている点にも注目し、「オープンAIに依存することで事業が危機に陥るリスクを避ける動き」と分析しています。ウェドブッシュ証券も同様の見解を示し、「ナデラCEOは、オープンAIの影に隠れず、レドモンド本社で次の成長段階を主導しようとしている」と述べています。
モデル接続標準「Model Context Protocol」の一般提供開始
マイクロソフトはまた、AIスタートアップのアンソロピックが開発した「Model Context Protocol」の一般提供を開始しました。これは、AIアプリケーションが必要なデータソースやツールと連携するための標準であり、エージェント機能の向上に不可欠とされています。
現在のところ、アップル(AAPL)、アルファベット(GOOGL)など他の大手テック企業はこの標準を採用していません。ウィンザー氏は、「この標準の導入により、企業顧客が生産性向上を目的としたAIエージェントの構築を容易にできるようになる」と述べています。
アナリストも高評価、マイクロソフトのAI戦略に期待感
レイモンド・ジェームズのアナリストは、今回の発表がマイクロソフトのAIサービスにとって非常に有益であるとし、「パワーユーザーがより多くのことを成し遂げられるようになり、これまでのエージェントの限界に対する不満を解消する」と評価しました。さらに、マイクロソフトがAI分野での勢いを維持できる可能性が高いとして、同社株の「アウトパフォーム」評価を継続しています。
マイクロソフトの一連のAI発表は、企業ユーザーのニーズを的確に捉え、実用的なソリューションとして昇華させており、同社のAI戦略が次のステージに突入したことを示しています。
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