SAPが欧州最大企業に、株価急騰の背景と今後の展望

  • 2025年5月19日
  • 2025年5月19日
  • BS余話

ドイツのビジネスソフト大手であるSAP(SAP)は、2025年に入ってから株価が約20%上昇し、欧州最大の企業となりました。この急騰は、オーランド(米フロリダ州)で開催されるアナリスト向けのカンファレンスに先立ち、大きな注目を集めています。

株価上昇の背景:マグニフィセント・セブン超えのパフォーマンス

SAPの株は、アメリカの「マグニフィセント・セブン」銘柄を凌ぐパフォーマンスを見せており、2025年のドイツ株式市場の上昇を主導しています。ドイツ銀行のアナリストは、同社の株価上昇が独DAX指数の上昇の約半分を占めていると分析しています。

関税の影響を受けにくいビジネスモデル

アメリカのトランプ大統領による関税政策が国際市場に不安をもたらす中で、SAPの株価はその影響を受けずに好調を維持しています。その理由の一つは、同社がハードウェアを扱わず、ソフトウェアのみを提供している点にあります。関税は物理的な商品に対するものであり、ソフトウェア提供企業であるSAPには直接的な影響が少ないと考えられています。加えて、SAPのクリスチャン・クラインCEOは、関税管理のために同社の製品が必要とされるケースが増えていると述べています。

クラウド移行とAI導入による成長余地

SAPは現在、クラウドベースのサービスへの移行と人工知能(AI)の導入を積極的に進めています。これはまだ始まったばかりの段階であり、今後の生産性向上や利益拡大の余地が大きいと期待されています。さらに、同社の売上の86%が既存顧客からのリピートによるものであることから、顧客維持力の高さも特筆すべき点です。バーンスタインのマーク・マードラー氏は、新規クラウド顧客の3分の2がSAPを初めて利用する企業であることも、製品力の高さを示していると指摘しています。

割高なバリュエーションに対する懸念

ただし、株価の上昇にはリスクも伴います。SAPの株価収益率(PER)は約56倍と、競合のオラクル(ORCL)の37倍、マイクロソフト(MSFT)の35倍、アルファベット(GOOGL)の18倍と比較して割高感があります。これにより、一部の投資家は今後の株価上昇余地に慎重な見方をしています。

アナリスト評価と今後の注目点

それにもかかわらず、多くのアナリストはSAP株を「買い」と評価しており、平均目標株価は300ユーロとされています。直近の株価は約265ユーロで推移しています。今週開催されるアナリスト向けイベントでは、これらの評価が妥当かどうかを見極める重要な場となります。

SAPは、グローバルな不確実性の中でも安定した成長を見せる数少ない企業の一つであり、今後も注目を集める存在となっています。

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