エヌビディア、中国事業強化へ——上海にR&D拠点を計画

アメリカの半導体大手、エヌビディア(NVDA)は、米国の輸出規制や中国国内の競合企業の台頭に直面する中、中国市場での競争力を維持するために新たな戦略を打ち出しました。同社は、中国・上海に研究開発拠点(R&Dセンター)を設ける計画を進めており、既存の従業員向けの新たな賃貸スペースの確保も視野に入れていると報じられています。

エヌビディアの中国戦略とその狙い

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、4月に上海市の龔正市長と会談し、この拠点設立について協議したと伝えられています。エヌビディアの広報担当者によると、「中国に対して輸出規制に準拠するようなGPU設計を送ることはない」とのことで、今回のR&Dセンターでも主要な知的財産やGPU設計が中国に提供されることはないとされています。

このR&Dセンターでは、自動運転などの分野での研究開発が行われる見込みであり、中国市場のニーズに応えると同時に、米国の輸出管理政策に対応する目的もあります。

ファーウェイとの競争激化と規制の影響

一方で、エヌビディアは中国国内の強力なライバル、ファーウェイ(Huawei)が開発を進めるAIチップとの競争にも直面しています。ファーウェイは、エヌビディアのH100チップに代わる製品として「Ascend 910D」のテストを開始する準備を進めており、早ければ今月中にもサンプル出荷を行う見込みと報じられています。

このような中、米国商務省は、エヌビディアの高度GPUが禁輸対象企業に渡るのを防ぐため、ペーパーカンパニーを使った抜け道の特定にも乗り出しています。さらに、アーカンソー州選出のトム・コットン上院議員は、GPUの流通経路を追跡するようチップメーカーに義務づける法案を提出しました。

中国市場の魅力とエヌビディアの課題

エヌビディアのフアンCEOは、ワシントンD.C.で開催されたHill & Valley Forumにおいて、「世界のAI研究者の50%が中国人である」と述べており、優秀な人材の確保という面でも中国市場は重要な存在です。同社の上海オフィスでは、次世代ディープラーニング用ハードウェアとソフトウェアの開発をリードするエンジニアなどの採用活動が進められています。

輸出規制の影響により、エヌビディアはこれまで中国向けに性能を抑えたチップを提供してきましたが、4月には、それらのH20チップまでもが販売禁止となり、さらに性能を落とした新たなプロセッサを投入せざるを得なくなっています。

フアンCEOは今月、CNBCのインタビューで「中国のAI市場は数年以内に500億ドルに達する」と語り、「この市場を失うことは大きな損失となる」と述べました。同社は2024年4月の規制変更に伴い、最大で55億ドルの損失を計上する見込みであると、規制当局に提出した報告書で明らかにしています。

エヌビディアの今後の展望

エヌビディアは今後も中国市場向けに性能を落としたGPUを展開し続けるとみられますが、ファーウェイ製チップの性能向上により、これらの低性能GPUの需要が低下する可能性も指摘されています。フアンCEOは、「政府の方針に応じて柔軟に対応する」との姿勢を示しており、引き続き中国市場における存在感の維持を模索しています。

中国市場を巡る地政学的なリスクとビジネスチャンスが交錯する中、エヌビディアの動向から目が離せません。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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