2025年5月16日、米国の投資情報誌『バロンズ』は、エネルギー市場の変動に関するラウンドテーブルを開催し、専門家たちが低迷する原油価格の中でも注目すべきエネルギー関連株について議論しました。この会合には、J.P.モルガンのナターシャ・カネヴァ氏、ロンドンの投資会社ナインティ・ワンのポール・グーデン氏、エセックス・グローバルのウィリアム・ペイジ氏、ピッカリング・エナジー・パートナーズのダン・ピッカリング氏が参加しました。彼らは、OPECの増産、米国シェールオイルの減速、再生可能エネルギーへの政策的逆風など、エネルギー業界の大きな変化を背景に、投資家にとっての機会を探りました。
エネルギー市場の現状と見通し
原油価格は、OPECの予想外の増産により、WTIで1バレルあたり約54ドル、ブレントで約58ドルまで下落しています。これにより、米国のシェールオイル生産は減速し、2026年には減少に転じる可能性が指摘されています。一方で、天然ガス市場は堅調で、特に液化天然ガス(LNG)の需要増加が見込まれています。中国のガス備蓄拡大や、AIによる電力需要の増加が背景にあります。
専門家が注目するエネルギー関連株
1. ダイヤモンドバック・エナジー(FANG)
パーミアン盆地で活動する大手シェール企業で、低コスト構造と豊富な在庫を有しています。現在の株価は約140ドルで、原油価格が80ドルに回復すれば190ドルまで上昇する可能性があります。将来的には、エクソンモービルやシェブロンによる買収対象となる可能性も指摘されています。
2. ビスタ・エナジー(VIST)
アルゼンチンのバカ・ムエルタ・シェールで生産を行う企業で、日産12万バレルを誇ります。政治的安定化により、投資環境が改善しており、成長企業として注目されています。
3. エクスパンド・エナジー(EXE)
天然ガスの大手生産者で、時価総額は250億ドル。キャッシュフローの4倍で取引されており、ガス価格が4~5ドルに上昇すれば、株価は25~50%の上昇が見込まれます。
4. GEベルノバ(GEV)
ガスタービンから風力発電、原子力まで幅広く手がける電力技術企業で、2028年には1株当たり20ドル以上の利益が予想されています。再生可能エネルギー部門も強化されており、長期的な成長が期待されます。
5. アメリカン・スーパーコンダクター(AMSC)
電力網向けの電力電子機器を提供する企業で、産業用ロボットや海軍向けの新技術も展開しています。収益は前年比で50%以上の成長を遂げています。
6. プリモリス・サービス(PRIM)
電力網やインフラ建設を手がける企業で、データセンターや半導体工場の建設需要増加により、強い受注残を抱えています。株価は約75ドルで、目標株価は85ドルとされています。
7. EQT(EQT)
米国第2位の天然ガス生産者で、LNG輸出の拡大により、今後の成長が期待されています。
8. ベーカー・ヒューズ(BKR)
LNG施設向けのターボコンプレッサーを提供する企業で、設備投資の増加に伴い、需要が高まっています。
9. シェニエール・エナジー(LNG)
米国最大のLNG輸出企業で、世界的な天然ガス需要の増加により、成長が見込まれています。
10. ウィリアムズ・カンパニーズ(WMB)
米国の天然ガスパイプラインの約3分の1を取り扱う企業で、インフラ需要の増加により、安定した収益が期待されています。
11. タルガ・リソーシズ(TRGP)
パーミアン盆地での天然ガス収集と液化天然ガス処理を手がける企業で、需要増加により、成長が見込まれています。
12. テクニップFMC(FTI)
海洋設備と設置において世界トップの企業で、オフショア開発の拡大により、需要が高まっています。
13. シェル(SHEL)
新CEOの下でコスト削減と事業再編を進めており、LNGカナダや米国の化学プロジェクトなど、大型プロジェクトの立ち上げが期待されています。
投資家への示唆
原油価格の低迷が続く中でも、エネルギー関連株には依然として投資機会が存在します。特に、天然ガスやインフラ関連企業は、AIやデータセンターの電力需要増加により、今後の成長が期待されています。また、堅実な財務基盤を持つ企業は、インフレヘッジとしても有効です。短期的な価格変動に左右されず、長期的な視点でエネルギーセクターへの投資を検討することが重要です。