先週の米国株式市場は、貿易戦争回避と人工知能(AI)関連株の復活により、大きく上昇しました。ダウ工業株30種平均(DJIA)は3.4%の上昇、S&P500種株価指数(SPX)は5.3%上昇し、ナスダック総合指数(COMP)は7.2%の上昇を記録しました。
経済指標や政治的な懸念がある中でも、市場の勢いは止まりませんでした。
米中関係の緩和が相場を後押し
週明け月曜日の5月12日には、米国と中国が相互関税を115ポイント削減することで合意したというニュースが入り、市場は強く反応しました。両国はここ数カ月、緊張状態にありましたが、今回の一時的な合意(90日間の緩和措置)が市場に安心感を与えました。
エヌビディアの急騰でAI関連銘柄が復活
今回の株価上昇は、貿易ニュースだけでなく、AI関連株の復活も大きく寄与しました。エヌビディア(NVDA)は2桁の上昇率を記録し、AI関連銘柄が再び市場をけん引する構図となりました。
トランプ大統領のサウジアラビア訪問をきっかけに、各国が自国でAIを開発・導入する動きが強まり、米国の半導体需要が再び注目されました。16日の金曜日にはアラブ首長国連邦が米国のAI技術の新たな買い手になると発表されたことも、AI関連銘柄への追い風となりました。
弱い経済データにもかかわらず投資家心理は改善
先週は、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が今後のインフレについて不安定さを警告し、小売売上高の伸びも3月から大きく減速しました。また、ウォルマート(WMT)は価格上昇を警告し、メタ・プラットフォームズ(META)は大型AIモデルの導入延期報道で株価が下落しました。
それでも市場は上昇しました。経済の「ソフトデータ」の弱さは顕著ですが、「ハードデータ」がそれに続いて悪化していないこと、また、企業業績の悲観的な見方が実際の業績悪化に結びついていない点が、安心材料になっています。
VIXの低下が示す投資家の安心感
14日には、Cboeボラティリティ指数(VIX)が30日ぶりに20を下回りました。S&P500が200日移動平均を1%以上上回る中でこの水準を下回ると、6カ月後に株価が中央値で4.5%上昇する傾向があり、70%の確率で株価は上昇するというデータがあります。
今後の展望
経済指標にはまだ不安要素がありますが、市場のセンチメントは改善しており、株式市場は冷静さを取り戻しつつあります。株価が落ち着きを見せる時、市場は上昇の準備が整っているとも言えます。
今後も、貿易政策やAI関連の動向に注目が集まる展開が続くと予想されます。