ヴァージン・ギャラクティック・ホールディングス(SPCE)の株価は、5月16日の米国市場で43.28%高の4.8ドルで取引を終えました。これは、同社が15日に発表した第1四半期決算が市場予想を上回り、宇宙旅行事業の進展に対する投資家の期待が高まったことが背景にあります。
第1四半期の売上は予想を上回る
ヴァージン・ギャラクティックは2025年第1四半期の決算を発表し、売上高は46万1,000ドルとなりました。これはファクトセット調べによる市場予想の30万ドルを上回る結果となっています。
同社は、2024年に商業運航を一時停止し、次世代宇宙船「デルタ級」の開発に注力しています。デルタ級は6人の乗客を収容でき、従来の4人乗り宇宙船から大幅な進化を遂げています。さらに、運行頻度の向上も目指して設計されており、ビジネス規模の拡大が期待されています。
2026年に「宇宙旅行券」の販売開始予定
同社は今回の決算発表で、「フューチャー・アストロノート(未来の宇宙飛行士)」向けのチケット販売を2026年第1四半期に開始する計画を明らかにしました。これは、航空券のように宇宙旅行券を販売するビジネスモデルへの布石となります。
さらに、最新鋭の宇宙船「デルタ級」の初フライトを2026年秋に予定しており、商業運航の再開に向けた準備が進められています。
財務基盤は依然として課題
同社は第1四半期末時点で5億6,700万ドルの現金および有価証券を保有しています。しかし、ファクトセット調べのアナリスト予測によれば、2025年から2026年にかけて約6億5,000万ドルを消費する見込みであり、2027年にフリーキャッシュフローが黒字転換するまでは資金繰りが課題となります。2027年には売上が4億1,500万ドルに達することが期待されています。
壮大な「スペースライン」構想と過去の誤算
ヴァージン・ギャラクティックは、複数のデルタ級宇宙船を世界各地の宇宙港で運用する「スペースライン」事業を目指しています。これは、航空会社のようなビジネスモデルを宇宙旅行に応用するという壮大なビジョンです。
しかし、これまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。2019年にSPACとの合併を経て上場した際、2022年の売上を約4億ドルと予測していましたが、実際には200万ドル強にとどまりました。2025年の売上予想も200万ドル未満と見込まれており、現時点では収益化には時間がかかる見通しです。
株価低迷からの反発
ヴァージン・ギャラクティックの株価は、2025年に入ってから年初来で43%下落し、過去1年では約87%もの大幅な下落を記録していました。2024年6月には1対20の株式併合(リバーススプリット)も実施し、株価の下支えを図ってきました。
今回の株価急騰は、これまでの低迷を打破するきっかけとなる可能性があります。投資家の期待は、2026年以降の本格的な商業運航開始と、その先にある宇宙旅行市場の拡大に向けられています。