米国の量子コンピュータ関連企業であるクォンタム・コンピューティング(QUBT)の株価が25月16日午前の米国市場で、一時36.36%の大幅高となりました。これは、同社が進めている量子チップファウンドリー(工場)の建設進捗が発表されたことが材料視されたためです。
同社の暫定CEOであるユーピン・フアン氏は、「アリゾナ州に建設中の工場が今四半期中に完成し、重要なマイルストーンを達成した」と述べています。このファウンドリーでは、光子チップに使用される材料の加工が行われ、データ通信やテレコム、量子技術応用市場に向けた製品の製造が予定されています。
さらに、同社は今四半期中にカナダの研究機関から5件目の受注を獲得しており、着実な実績を積み上げています。
量子コンピューティング技術への期待が高まる
クォンタム・コンピューティングは、NASAやロスアラモス国立研究所など、政府系および商業パートナーとの連携を深めています。フアン氏は、「これらの連携は、量子技術に対する関心の高まりを示すものだ」と述べ、今後のビジネス拡大への期待感を示しました。
業績面は依然として厳しい状況
クォンタム・コンピューティングは同時に2025年1-3月期の決算も発表しました。同期間の売上高は3.9万ドルで、前年同期の2.7万ドルからは増加したものの、直前四半期の6.2万ドルからは減少しました。
営業費用は830万ドルとなり、前四半期の890万ドルからは減少しましたが、前年同期の630万ドルと比較すると増加しています。これは主に人件費の増加が影響していると説明されています。
株価は急騰も、年初来では依然としてマイナス圏
過去1年間で同社株は1,457%という驚異的な上昇を記録してきました。しかし、2025年に入ってからは調整局面に入り、年初来では依然として25%下落しています。
特に、3月にはエヌビディア(NVDA)の年次開発者会議後に業界全体で売りが広がり、クォンタム・コンピューティングの株価も大きく下落しました。
また、2024年11月と2025年1月には、同社のビジネスの健全性に疑問を呈するショートレポートが公開され、株価の下押し圧力となりました。
経営陣の交代劇も影響
先月、同社の前CEOであるウィリアム・マクガン氏が退任を発表し、ユーピン・フアン氏が暫定的に経営を指揮しています。現在は後任CEOの選定が進められており、経営体制の強化が急務となっています。
クォンタム・コンピューティングは今後、量子技術関連市場における事業展開を加速させ、政府や企業との連携をより一層深めていく方針です。