米国のテレヘルス企業であるドクシミティ(DOCS)は、第4四半期決算で市場予想を上回る好成績を発表しました。しかし、来期の見通しが市場の期待を下回ったことで、投資家の失望を招き、株価は5月17日午前の米国市場で一時16%安の49.15ドルまで急落しました。
マクロ環境の不透明感がガイダンスに影響
ドクシミティは、医療ニュースのキュレーション、テレヘルスツール、症例共有プラットフォームを提供するオンラインサービスを展開しています。医療従事者向けのモバイルアプリでは、処方箋の発行やビデオ通話、テキストメッセージを通じた患者とのやり取りが可能です。
同社のジェフリー・タンジー最高経営責任者(CEO)は、投資家向け説明会で「市場の減速は現時点で確認されていないが、政策面での大きな不確実性を考慮し、それを前提にガイダンスを作成した」と説明しています。
広告収入への懸念と市場成長予測
経済環境が悪化すれば、製薬業界の広告支出が抑制される可能性があり、これがドクシミティの利益に悪影響を与えるリスクが指摘されています。
一方で、キーバンクのアナリストによると、製薬業界のデジタル市場は前年比5~7%の成長が見込まれており、これは過去1年間とほぼ同等の成長率です。
市場予想を上回った決算内容
ドクシミティの第4四半期の調整後1株当たり利益は38セント、売上高は1億3,830万ドルとなり、ファクトセットが調査したアナリスト予想(1株当たり利益27セント、売上高1億3,370万ドル)を上回りました。
しかし、投資家の関心は同社が示したガイダンスに集まりました。
今後の業績見通しが重しに
ドクシミティは、2025年度第1四半期の売上高を1億3,900万~1億4,000万ドル、調整後EBITDAを7,100万~7,200万ドルと見込んでいますが、これは市場の期待を下回る水準となっています。
エバコアのアナリストであるエリザベス・アンダーソン氏は、政策面での不確実性を理由に目標株価を60ドルから50ドルに引き下げ、「同社は業界内で構造的なシェア拡大が見込まれるものの、短期的には政策リスクの影響を受けやすいため、中立的な立場を維持する」とコメントしています。
製薬業界を取り巻く政策リスク
製薬業界は現在、さまざまな方向からの規制圧力に直面しています。トランプ政権は、製薬会社に対する「大規模な」関税の導入を示唆しており、アメリカ国内での薬価引き下げを強く主張しています。これらの施策は、製薬企業の収益に大きな打撃を与える可能性があるとみられています。
ドクシミティの中長期的な成長見通し
今回の株価下落にもかかわらず、ドクシミティの株価は過去1年間で約80%上昇しており、依然として投資家の関心を集めています。中長期的には、同社が提供するデジタルヘルスケアサービスの需要拡大により、着実な成長が期待されています。