米国半導体大手のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価が、2025年5月14日の米国市場で大きく上昇しました。背景には新たな自社株買いプログラムの発表と、サウジアラビアとのAI分野における協業が挙げられます。
60億ドル規模の新規自社株買いプログラムを発表
AMDは、取締役会が新たに60億ドル規模の自社株買いプログラムを承認したと発表しました。これにより、既存の枠と合わせて約100億ドル相当の自社株買いが可能となります。
同社のリサ・スー会長兼CEOは、「今回の自社株買い拡大は、AMDの戦略的方向性、成長見通し、そして安定したフリーキャッシュフロー創出能力に対する取締役会の信頼を示している」とコメントしています。
この発表を受けて、AMDの株価は14日昼過ぎの段階で5.5%高の118.66ドルを付け、投資家の期待の高さがうかがえます。
サウジアラビアとのAI分野での大型協業も追い風に
さらに、AMDはサウジアラビアのHumain社と提携し、AIコンピューティングセンターのネットワークを構築する計画を明らかにしました。両社は今後5年間で最大100億ドルを投資し、500メガワット規模のAI計算能力を展開する予定です。
競合のエヌビディア(NVDA)も同様にHumainと500メガワット規模のデータセンタープロジェクトを進めており、AI分野での覇権争いが激化しています。
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ビベック・アリヤ氏は、「今回のプロジェクトは、AMDが初めてエヌビディアと同様の立場で大型案件に関与する機会となる。ただし、エヌビディアは直接契約による受注が中心である一方、AMDは共同事業形式での参画となるようだ」と指摘しています。
アリヤ氏は、AMDの目標株価を120ドルから130ドルに引き上げ、「買い」の格付けを継続しました。
米商務省、AI拡散規制の撤回で半導体業界に追い風
さらに追い風となったのが、米国商務省が発表したAI拡散規制の撤回です。当初、トランプ政権はAIチップの海外販売を制限するルールを検討していましたが、今回の方針転換により、AMDを含む半導体メーカーは新たな顧客獲得のチャンスを手にすることとなりました。
米国内ではインフラ投資の勢いが鈍化しつつある中、グローバル市場での成長が一層重要となるため、このニュースは大きなプラス材料となっています。
AMDの今後の成長戦略と株主還元姿勢が明確に示されたことで、投資家の期待感は一段と高まっています。
*過去記事はこちら AMD