サーバーメーカーであるスーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)が投資家から大きな注目を集めています。5月13日、米国の大手証券会社レイモンド・ジェームズが同社のカバレッジを開始し、「アウトパフォーム」の格付けを付与しました。目標株価は41ドルとされており、これは現在の株価から約20%の上昇余地を示しています。
この発表を受けて、スーパーマイクロの株価は13日午前の米国市場で13.1%上昇し、37.98ドルを記録しました。
AIインフラのリーダーとしての強み
レイモンド・ジェームズのアナリスト、サイモン・レオポルド氏は、スーパーマイクロを「AIに最適化されたインフラストラクチャーのマーケットリーダー」と評しています。同社の売上の約70%がAIプラットフォーム関連で占められている点が、この評価の根拠です。
スーパーマイクロは、デル・テクノロジーズ(DELL)、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)、台湾のクアンタ・コンピュータといった大手ITサプライヤーと競合していますが、その中でも「スイート・スポット」と言える立ち位置を確立していると評価されています。
カスタマイズ力と競争力のある価格設定
スーパーマイクロの大きな強みは、高度にカスタマイズされたプラットフォームを製造する能力です。これは他のブランド向けに製品を提供する相手先商標製品メーカー(OEM)とは一線を画しています。
さらに、レイモンド・ジェームズは同社が「非常に競争力のある価格設定」を実現している点にも言及しています。この価格競争力が、スーパーマイクロの市場優位性を支えています。
課題もあるが、長期成長のポテンシャルは十分
一方で、スーパーマイクロには課題もあります。特に、コンサルティングや「as-a-service」といった代替消費オプションを提供する能力に欠けている点が指摘されています。しかし、貿易摩擦が続く中で、スーパーマイクロはデルなどの競合他社よりも有利な立場にあると評価されています。
同社は最大の製造施設を台湾に持ちつつ、アメリカ国内にも重要な拠点を有しているため、競合他社とは異なる強みを発揮しています。
エヌビディアのブラックウェル・アーキテクチャへの移行がもたらす影響
今後、データセンターのワークロードを処理するために設計されたエヌビディア(NVDA)のホッパー・アーキテクチャから、次世代のブラックウェル・アーキテクチャへの業界全体の移行が予定されています。この動きがスーパーマイクロの短期的な成長に影響を及ぼす可能性もあります。
しかし、レイモンド・ジェームズは「AIプロジェクトが長期的な成長ドライバーになる」との見解を示し、スーパーマイクロはこれらの課題を克服できると見ています。
過去の課題と今後の展望
スーパーマイクロは、2024年2月に年次報告書の提出が遅れ、ナスダックからの上場廃止を間一髪で回避するという問題を抱えていました。この出来事が風評リスクとして現在も影響しています。
それでも、同社のエンジニアリング力と製造規模の組み合わせは、競合他社を凌駕する大きな武器となっています。AIインフラ市場の成長に加え、エヌビディアのブラックウェルの普及や、金融・ヘルスケアといった企業向け市場への浸透が、スーパーマイクロの株価上昇を後押しする要因になると予測されています。
スーパーマイクロは「AIピュアプレイ」銘柄として注目
スーパー・マイクロ・コンピュータは、AIプラットフォームに特化した「AIピュアプレイ」に近い企業として、今後も投資家の注目を集め続けると考えられます。同社の独自性と市場でのポジションは、他社にはない魅力を提供しており、レイモンド・ジェームズの「アウトパフォーム」評価もその裏付けとなっています。
今後の動向を注視しつつ、スーパーマイクロがどのように成長していくのかに期待が高まります。
*過去記事はこちら スーパー・マイクロ・コンピュータ SMCI