米半導体大手エヌビディア(NVDA)が、5月13日の米国市場で株価を5.63%上昇させ、終値で3兆1700億ドルの時価総額を達成しました。これは2月以来となる3兆ドル超えの復帰であり、サウジアラビアとのAIチップ供給に関する大型契約報道が大きな後押しとなりました。
サウジアラビアとの新協定 ─ データセンター建設とAIインフラ整備
今回の契約は、米国とサウジアラビア政府が進める先端半導体の輸出協議の一環です。特に、サウジアラビアの国営投資ファンド(PIF)が支援する新興AI企業「Humain」とのパートナーシップにより、エヌビディアは今後5年間で1万8000基のAIチップを供給し、500メガワット規模のデータセンター建設を進める計画です。
Humainはアラビア語の大規模言語モデル(LLM)開発やAIインフラ整備を担う企業として、地域のデジタルハブ化を目指しています。これにより、中東市場におけるエヌビディアの影響力はさらに強まる見通しです。
国家安全保障と「データ大使館」構想
米国側の懸念事項である先端半導体の第三国流出リスクに対し、「データ大使館」構想が浮上しています。これは、サウジ国内のデータセンターを外国法下に置くことで、機密データや技術流出を防ぐ仕組みです。米中対立下でのデータガバナンス強化策としても注目されています。
トランプ政権によるAI輸出規制の見直し
さらに、トランプ政権はバイデン前政権下で導入された複雑なAI輸出規制を撤廃し、「アメリカのイノベーションを解き放つ」方針を示しています。これにより、サウジアラビアやUAE向けの半導体輸出も一部規制緩和が検討されており、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)にとっては新たな成長機会となります。
AMDも大型契約で追随、セクター全体が上昇
エヌビディアに続き、AMDもHumainとの間で100億ドル規模のAIインフラ構築契約を発表し、株価は4.01%上昇しました。フィラデルフィア半導体指数(SOX)も堅調に推移しており、セクター全体に好材料が波及しています。
エヌビディア決算への期待と今後の焦点
一方で、中国向けH20チップの禁輸措置による5.5億ドル規模の損失見込みも公表されており、5月28日に予定されている決算発表が重要な分岐点となります。新たな中東市場での収益拡大が、こうしたリスクをどこまで相殺できるかが投資家の関心を集めています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA