2025年に入り、ドナルド・トランプ大統領による関税政策への懸念が市場全体を押し下げ、ベア派投資家は利益を得てきました。しかし、5月12日に米中間で暫定的な貿易合意が成立したことを受け、株式市場は急騰し、売り方(ショートセラー)が苦境に立たされています。
ショートセラーは株式を借りて売却し、価格が下落した際に買い戻すことで差益を得る手法を取ります。しかし、株価が上昇すると損失リスクが高まり、ポジションを早急に買い戻す必要が出てきます。この現象が「ショートスクイーズ」です。
ティグレス・ファイナンシャル・パートナーズの最高投資責任者アイヴァン・ファインセス氏は、「大きな転換が進行しており、ショートカバーやベア派ヘッジの解消が加速する」とレポートで述べています。
この動きは特に小型株と中型株で顕著となり、ラッセル2000指数とS&P400中型株指数はともに約3.5%上昇しました。これはダウ工業株30種平均(+2.81%)やS&P500大型株指数(+3.26%)を上回るパフォーマンスです。
小型・中型株の高水準なショート残高が鍵
スティーブンスのアナリスト、メリッサ・ロバーツ氏は、小型株と中型株に対するベア派の姿勢が数週間にわたり崩れなかったと指摘しています。4月30日時点での小型・中型株のショート残高比率は6.3%と高水準で、大型株の1.8%を大きく上回っています。
ロバーツ氏は、ヘルスケア、エネルギー、テクノロジー、消費財セクターに属する小型・中型株でショート残高が特に多いことを明らかにしました。
具体的には、ソフトウェア企業のクラビヨ(KVYO)、飲料メーカーのビタ・ココ(COCO)、シンプリー・グッド・フーズ(SMPL)、卵生産大手カルメイン・フーズ(CALM)、バイオテクノロジー企業の10Xジェノミクス(TXG)、フラッキング用砂輸送会社のアトラス・エナジー・ソリューションズ(AESI)が、最近ショート残高比率の大幅な上昇を記録しました。
これらの銘柄は、今後の貿易交渉次第でショートセラーがさらなるヘッジ行動を取るかどうか、注目されます。
ショートスクイーズの余地はまだ残されている
さらに、4月末時点で11セクター中10セクターにおいてショート残高が増加していることから、市場全体としてもショートカバーが続く可能性が高まっています。
今後の米中関係や経済指標次第では、ショートスクイーズの圧力が一段と強まることも考えられます。投資家にとっては、小型・中型株におけるショートポジションの動向を注視することが重要となりそうです。