米中両国が相互関税の大幅な削減で合意したことで、半導体セクターが2月以来の高値を記録しました。米国市場全体がこのニュースを受けて上昇する中、フィラデルフィア半導体指数(SOX)は前日比7%高の4,780.93ドルで5月12日の取引を終えました。これは2月26日に記録した4,990.82ドル以来の高値ですが、2024年7月に記録した過去最高値5,904.54ドルと比較すると約19%低い水準にあります。
米中貿易協議がもたらした関税削減のインパクト
米中両国は90日間の期間限定で関税を大幅に引き下げることで合意しました。米国は中国製品への関税を145%から30%に、中国は米国製品への関税を125%から10%に引き下げることになります。ウェドブッシュ証券のアナリストは、この合意は今後の包括的な協議の序章に過ぎず、両国の関税は今後数か月でさらに引き下げられる可能性が高いと指摘しています。
加えて、「今回の大規模な関税削減により、当面は景気後退懸念が後退する」と述べ、今年中に株式市場とテクノロジー株が新高値を更新するシナリオを想定しています。
半導体大手企業の株価が軒並み上昇
エヌビディア(NVDA)の株価は5.4%上昇し、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は5.1%の上昇を記録しました。ブロードコム(AVGO)は6.4%、クアルコム(QCOM)は4.8%の上昇となりました。指数構成銘柄の中で最大の上昇率を記録したのはラティス・セミコンダクター(LSCC)で、12.8%高となりました。一方、インテル(INTC)は3.5%の上昇にとどまりました。
「マグニフィセント・セブン」の時価総額が急拡大
エヌビディアを含む「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大型テクノロジー株群は、今回の合意によって1日で合計8,300億ドル超の時価総額を増やしました。エヌビディア単独で1,550億ドルの上昇となっています。
メリウス・リサーチのアナリストは、米中間の関税と貿易関係に関する透明性が高まったことで、エヌビディア株が「より投資しやすい銘柄になった」と評価しています。今後、トランプ大統領が通商拡大法第232条に基づく半導体輸入制限に関する決定を下す見込みであり、これがサプライチェーンに短期的な需要急増をもたらしている状況です。特にパソコンやスマートフォン部品などの需要が一時的に急増しています。
エヌビディア株は「ファンダメンタルズ重視」の局面へ
メリウス・リサーチは別のレポートで、エヌビディア株について「すべてが加速器を必要としている」と表現し、今こそファンダメンタルズに立ち返る時期であると強調しています。同社の株価収益率(PER)は過去5年で最も低い水準にあることも指摘されており、投資妙味が増している状況です。
まとめ
米中貿易協議による関税削減は、半導体セクターに大きな追い風となり、投資家心理を大幅に改善させました。今後の協議進展次第では、さらなる株価上昇も期待されます。特にエヌビディアをはじめとする大型テクノロジー株は、引き続き注目すべき投資対象として位置付けられています。