クリーンエネルギー企業のオクロ(OKLO)は5月13日、アメリカ・アイダホ国立研究所で計画している初の小型原子炉「オーロラ・パワーハウス」の建設地で、重要な地質調査を完了したと発表しました。この調査は、商業用原子力発電の実現に向けた「極めて重要なステップ」だとしています。
地下ボーリング調査が完了、計画は前進
オクロは、地中深くにボーリング孔を掘削し、地質や地下条件を詳しく調査しました。この作業は、発電所建設地の適正評価を行うための基礎的な工程であり、今回の完了によって計画は次の段階へと進むことになります。
オクロは、従来型の大型原子炉と比べて発電量は少ないものの、建設と配備が容易な小型モジュール炉(SMR)を専門とする企業です。同社の設計する原子炉は、使用済み核燃料(いわゆる核廃棄物)を燃料とし、10年に一度の再燃料補給で運用できることが特徴です。
米エネルギー省との協定締結、環境規制にも対応
今回の地質調査は、米国エネルギー省(DOE)との覚書締結、およびアイダホ国立研究所との環境規制順守に関する協定の一環として実施されました。この調査結果は、米国原子力規制委員会(NRC)へのコンバインドライセンス(建設・運転一括許可)申請書に盛り込まれます。
オクロは2019年にDOEからサイト許可を取得し、翌2020年にNRCにコンバインドライセンスを申請しましたが、「技術情報が不十分」として却下されました。2022年に提出した改訂申請も同様の理由で却下されています。
2027年末までの商業運転開始を目指す
オクロの最高経営責任者(CEO)であるジェイコブ・デウィッテ氏は、2027年末までに商業用電力の供給を開始する計画を堅持するとしています。最新の株主向け書簡では、同社が2025年に「大きな進展」を遂げ、オーロラ・パワーハウスの出力を従来の50メガワットから75メガワットへと拡大したことを報告しています。
また、エネルギー配備契約を締結したRPowerとの提携や、原子炉同位体製造企業であるアトミック・アルケミーの買収など、新たな収益機会を創出する戦略的な取り組みも進めています。
アラスカやオハイオでの新規プロジェクトも視野に
オクロは、アラスカ州のアイエルソン空軍基地への電力供給を目指したプロジェクトや、オハイオ州のDOE所有地での商業用発電所2基の建設計画も進行中です。
デウィッテCEOは「原子力発電は、クリーンで信頼性が高く、拡張性のあるエネルギー未来に不可欠な存在であることは明白だ」と強調しています。
株価動向と今後の見通し
オクロの株価は、前回決算での赤字拡大を受けて3月に大きく下落しましたが、足元では回復基調にあります。5月12日時点での株価は28.85ドルで、年初来36%、過去12か月で195%の上昇を記録しています。
今後は、資本支出の増加が続くものの、初の原子炉稼働に向けた進展が投資家から注目されています。
*過去記事「AI革命と原子力の融合:オクロが描く未来像」