米中が互いの関税を90日間引き下げることで合意し、5月12日の米国株式市場は大きく反発しました。特に、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META)、テスラ(TSLA)、アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)、アルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)のいわゆる「マグニフィセント・セブン」が合計で8,309億ドルもの時価総額を一日で増やしました。
米中関税引き下げの詳細と市場への影響
今回の合意により、米国は中国製品への関税を145%から30%に、中国は米国製品への関税を125%から10%にそれぞれ引き下げます。この措置は90日間限定で行われるものですが、今後の交渉次第でさらに大幅な引き下げが進むとの見方が広がっています。
ウェドブッシュ証券の著名アナリスト、ダン・アイブス氏は「今回の関税緩和はより包括的な交渉の第一歩に過ぎない」と指摘し、「市場全体およびテクノロジー株の新高値更新が視野に入ってきた」との見解を示しました。また、「現時点で大規模な関税引き下げが行われたことで、景気後退懸念は一時的に払拭された」としています。
アマゾンが最大の上昇率、アップルが時価総額で首位
今回の上昇で、アマゾンの株価は前日比8.1%上昇し、最も大きな値上がり率を記録しました。続いて、メタが7.9%、テスラが6.8%、アップルが6.3%、エヌビディアが5.4%、アルファベットが3.7%、マイクロソフトが2.4%上昇しました。
特にアップルは時価総額ベースで最大の増加を見せ、一日で1,830億ドルの増加となりました。アマゾンも1,650億ドルと大きな伸びを見せています。
サプライチェーン懸念の緩和とエヌビディアの見通し
関税引き下げは、サプライチェーンの混乱を懸念していたテクノロジー企業にとっても朗報となりました。しかし、エヌビディアに対する米国のH20チップ販売規制など、依然として課題は残っているとウェドブッシュは指摘しています。
メリウス・リサーチのアナリストも同日、エヌビディアの「買い」評価を再確認し、「関税および中国市場に関する不透明感の緩和が、同社の投資魅力を高めた」と述べました。
半導体供給と価格上昇リスク
一方で、トランプ大統領による「通商拡大法232条」に基づく半導体輸入規制の決定を控えており、テクノロジー業界全体が一時的な需要急増への対応に追われている状況も報告されています。特に、パソコンやスマートフォン部品の販売に「不自然な急増」が見られるとしています。
エヌビディアはTSMC(TSM)の台湾国内でのコスト増加を背景に、チップ価格の引き上げを検討しているとみられています。TSMCのアリゾナ工場を利用する場合、コストは最大で40%上昇する可能性があるため、この影響を顧客に転嫁することも考えられますが、利益率の伸びを抑える要因にもなり得ます。
規制緩和とAI投資の加速
さらに、トランプ大統領がバイデン政権下で導入されたAI拡散規制の撤廃を検討していることも、エヌビディアにとって追い風となる見通しです。メリウスは「この規制撤廃により、中東諸国との大型投資案件が再び進展する可能性がある」とし、AI関連投資の拡大がエヌビディア製チップへの需要をさらに押し上げると分析しています。
米中貿易摩擦の緩和とともに、マグニフィセント・セブンを中心とするテクノロジー株は新たな上昇局面に入りつつあります。今後の交渉次第で、株式市場全体にもさらなる好影響が期待されています。