アップル(AAPL)の株価が5月12日の米国市場で大幅に上昇しました。米中90日間の関税休戦合意が好感され、午後3時近くの段階で同社株は6.3%高の210.67ドルをつけました。今年に入り16%下落していた株価が一時的に回復基調となっています。
投資家が懸念していたのは、関税がアップルのビジネスに与える影響です。なぜなら、同社が販売するiPhoneのほとんどが中国で製造されているからです。
電子機器は一時的に関税対象外、ただしリスクは残る
現時点では、米国政府が中国に対して課している関税の対象から電子製品は除外されています。しかし、将来的には半導体や電子機器が新たなセクター関税の対象になる可能性もあります。さらに、ベトナムやインドといった他国から輸入される製品にはすでに関税がかかっています。
米商務省は現在、半導体や電子機器に関する関税政策の見直しを進めています。ホワイトハウスの報道官クシュ・デサイ氏は、「トランプ政権は国家および経済安全保障にとって重要な製造業の国内回帰を、多面的かつ慎重に進める方針だ」と述べています。
アップル、製造拠点の多様化を加速
iPhoneの大半が中国で製造されていることから、関税緩和の進展は投資家にとって安心材料となっています。しかし、アップルはリスクを軽減するため、製造拠点の分散を進めています。
最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏は、5月1日の決算説明会で、「6月期に米国で販売されるiPhoneの大多数はインド製になる」と述べました。また、iPad、Mac、Apple Watch、AirPodsについても「ほぼすべてがベトナム製になる」と明言しました。
米国内での製造拡大にも意欲、5000億ドル投資計画を発表
トランプ大統領は記者会見で、「今朝、ティム・クック氏と話し、アップルが米国国内に多くの工場を建設する計画を進めている。5000億ドル規模の投資になる」と語りました。
この5000億ドルという巨額投資については、クック氏が5月1日の決算説明会で「今後4年間で米国に投資する」と発表しています。
供給網の移転はコスト増を伴い、マージン圧迫も懸念
ただし、サプライチェーンの移転は短期間で完了するものではなく、多大なコストがかかります。アナリストは、今後数四半期にわたりアップルの利益率(マージン)に悪影響を与えると予想しています。
メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・ライツェス氏は5月2日のレポートで、「関税や中国からの移転によるコスト増を考慮すると、アップルの長期的な利益率や設備投資の水準は依然として不透明」と指摘しています。
製品価格の引き上げは避けられず、新機能で正当化か
アップルがマージンを維持するためには、製品価格の引き上げが避けられない状況です。この秋に発売予定の新型iPhoneは、価格が上昇する可能性が高いとウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。ただし、アップルは「新機能によるコスト増が理由」として、関税による影響を前面に出さない姿勢を取っています。
どのような新機能が価格引き上げの根拠となるのかは明らかにされていません。
今後も波乱含みの展開に注視が必要
米中関係の緩和やアップルのサプライチェーン多様化は、一時的な安心材料となりますが、先行きは依然として不透明です。製造拠点移転に伴うコスト増や、製品価格への影響など、アップルが直面する課題は山積しています。
今後も同社の動向に注目が必要です。
*過去記事はこちら アップル AAPL