米国の電気自動車メーカーであるテスラ(TSLA)の株価が5月9日午前の米国市場で5.09%上昇し、304.64ドルに達しました。これにより、3週連続の株価上昇が現実味を帯びてきました。
貿易協定が追い風に、関税緩和で輸出コストが低下
今回の株価上昇には複数の要因が絡んでいますが、そのひとつが米英間の貿易協定に関する進展です。8日の取引では、株価が3.1%上昇しました。この背景には、ドナルド・トランプ大統領とイギリスの間で進展した貿易交渉があるとされています。この協定により、テスラが米国からモデルSやモデルXを輸出する際の輸入関税が引き下げられる可能性が示唆されており、輸出コストの低下が期待されています。
ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス氏は「中国に対する関税や貿易摩擦の緩和に対する楽観的な見方がテスラの株価にとって追い風となっている」と述べています。
ロボットタクシー事業への期待感が高まる
さらに、元テスラのエンジニアであるフランク・ヤシャール氏によるロボットタクシーに関するエッセイも投資家の間で注目されています。ヤシャール氏は冒頭で、スペースXと従来の衛星産業を比較し、スペースXが低コストの衛星を7,000基以上展開して、数百万人に高速Wi-Fiを提供していることを紹介しています。
同氏は、テスラのロボットタクシー事業も同様に、従来のタクシーサービスに対して圧倒的に低コストで運用できる可能性があると主張しています。実際に、アルファベット(GOOGL)傘下のウェイモが週に25万回以上の自動運転タクシー走行を完了している中、テスラのこの取り組みが次の大きな成長エンジンとして期待されています。
第1四半期決算後も株価は安定、ロボットタクシーへの期待が継続
テスラが第1四半期の決算を発表した4月22日の週、株価は18.1%上昇しました。売上や販売台数は市場予想を下回ったものの、ロボットタクシーの開発スケジュールは予定通り進んでいるとされており、6月からサービスを開始する計画に変更はありません。
また、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、今後はワシントンでの時間を減らし、テスラでの業務により多くの時間を割く意向を示しました。この発言も投資家に安心感を与えた要因といえます。
売上は減少も、ロボットタクシーが第2四半期の鍵に
一方で、販売面には依然として課題が残っています。第1四半期のテスラの販売台数は約33万7,000台で、前年同期比で13%減少しました。ウォールストリートの予想よりも約4万台少ない結果でした。4月の米国、欧州、中国における販売データでも、明確な回復傾向は見られていません。
それでも、投資家の関心はロボットタクシーに集中しており、この新事業の進展が第2四半期の株価を大きく左右する可能性があります。順調に進展すれば株価を押し上げる要因となりますが、期待に届かなければ反対に株価にマイナスの影響を与えるリスクも考えられます。
9日の上昇で週間の下落を打ち消すか
9日の取引開始時点で、テスラの株価は週間で0.8%下落していました。しかし、9日に十分な上昇があれば、3週連続の株価上昇が確定する可能性があります。投資家の期待がロボットタクシーに向いている現在、今後の株価動向から目が離せません。
*過去記事はこちら テスラ TSLA