米国のサイバーセキュリティ企業、クラウドストライク・ホールディングス(CRWD)に関する取引について、米ブルームバーグが5月9日、詳細な調査報道を発表しました。それによると、クラウドストライクが2023年にカラソフト・テクノロジーとの間で締結した約3,200万ドルの契約に対して、米国の司法省と証券取引委員会(SEC)が調査を強化しているとのことです。
IRSとの契約実態に疑問、当局が関心を寄せる取引の詳細
ブルームバーグの報道によると、問題の取引はIRS(米国内国歳入庁)向けに行われたとされるものの、実際には製品の購入も納品もされていなかったという点に焦点が当てられています。クラウドストライクは、契約自体は「キャンセル不可能な注文」であり、ディストリビューターであるカラソフトが期日通りに支払いを行ったと説明しています。
一方で、取引の実態が伴っていなかった可能性があるとして、社内の一部従業員が「売上の事前計上(プリブッキング)」の懸念を表明していたことも報じられています。この点について、調査当局はクラウドストライクの内部文書や関係者への聞き取りを通じて、取引の透明性と会計処理の妥当性を確認しているとされています。
調査対象は他の政府機関取引にも拡大
さらに同報道では、同社が2023年に行った他の政府機関向けの契約、例えば保健福祉省(HHS)やエネルギー省(DOE)との取引についても、類似の会計処理が行われていた可能性があるとして調査の対象に加えられていると伝えています。
企業の収益発表への影響と株価の動き
クラウドストライクの最高経営責任者(CEO)は、問題とされている取引について過去の決算説明会で「連邦政府向けの大型契約」として言及しており、この発表後に同社株価が上昇した経緯があります。今回の報道によって、会計処理が不適切であった可能性が示唆されることで、投資家の間では企業の財務信頼性に懸念が生じています。
実際、報道が出た直後には9日の米国市場で同社の株価が一時5%以上下落する場面も見られました。終値は4.21%安の410.57ドルとなっています。クラウドストライクは現在、コスト削減の一環として約500人の人員削減にも踏み切っており、企業としての立て直しを図る局面にあると言えそうです。
*過去記事はこちら クラウドストライク CRWD