2024年末にかけて連続32四半期にわたり自社ガイダンスを上回る実績を記録してきたトレードデスク(TTD)は2月12日に発表した第4四半期決算で突如つまずき、市場予想を下回る業績を発表しました。この予想外の結果により、株価は一時60%以上も下落。短期的な利益狙いの投資家たちがこぞって売却に走りました。
しかし、5月8日に発表された2025年第1四半期の決算でトレードデスクは見事に復活の兆しを見せ、長期視点の株主たちにとっては希望を取り戻す内容となりました。
決算で明らかになった劇的な回復
同社の第1四半期の売上高は6億1,600万ドルとなり、前年同期比で25%の成長を記録しました。これは前四半期の22%成長を上回るペースです。調整後1株当たり利益(EPS)は0.33ドルで、前年同期比27%の増加となりました。
市場予想では、売上高が5億7,530万ドル、調整後EPSが0.25ドルとされており、実際の業績はこれらの予想を大きく上回る結果となりました。
この成長の背景には、AI技術を搭載した新しいメディア・バイイング・プラットフォーム「Kokai」の採用拡大があります。Kokaiは1秒あたり1,300万件以上の広告インプレッションにアクセスでき、その中から最適な広告枠を迅速に選定する機能を備えています。これにより、広告主は適切なタイミングで、適正価格で、ターゲットユーザーにリーチできるようになります。
トラブルからの立ち直り
トレードデスクは前四半期において、旧プラットフォームであるSolimarからKokaiへの移行に関して運用上の課題が発生し、一時的に成長が鈍化しました。この反省を踏まえ、同社は組織体制を見直し、より俊敏に市場機会を捉えるための再編を実施しました。
再編の結果、コネクテッドTV(CTV)やリテールメディア、オーディオ広告など、成長が期待される領域での競争力を高める土台が整いつつあります。
CEOのジェフ・グリーン氏は、「第4四半期に実施した戦略的な改革が成果を見せ始めており、今後も市場の成長を上回るパフォーマンスを続けることに自信を持っている」とコメントしています。
また、顧客維持率は95%超を記録し、11年連続で高水準を維持しています。
今後の見通しと株価の魅力
一時の業績悪化で不安が広がったものの、今回の決算でトレードデスクは回復力を示しました。次の四半期に向けて、同社は売上高を少なくとも6億8,200万ドルと予想しており、前年同期比で約17%の成長が見込まれています。
なお、同社は従来から保守的なガイダンスを出す傾向があり、今回も実際の業績が上振れる可能性があります。
現在の株価は将来利益の34倍(PER)で取引されています。これは過去3年間の平均(約55倍)と比べると割安な水準にあります。決算発表後には、時間外取引で株価が11%以上上昇するなど、市場の期待が回復しつつあります。
まとめ
トレードデスクは、一時的な挫折を乗り越えて再び成長軌道に戻りつつあります。AIを活用した新プラットフォームや高い顧客定着率、そして今後の成長市場に向けた戦略など、長期的な投資先としての魅力を改めて示しました。
*過去記事はこちら トレードデスク TTD