エヌビディア、中国AI市場の規制強化に直面も、長期的成長には楽観的見通し

米半導体企業のエヌビディア(NVDA)は、アメリカ政府による対中輸出規制の強化により、中国市場での成長機会を失う可能性を懸念しています。同社のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はCNBCのインタビューで、今後数年で5兆円規模に成長すると見込まれる中国の人工知能(AI)市場に参入できないことは「大きな損失」であると語りました。

特に、中国向けに設計されたH20チップがアメリカの規制により販売禁止となったことを受けて、フアン氏は「政府の方針に柔軟に対応する必要がある」と述べ、「国家の利益に沿う形で支援を継続する」と強調しました。

アナリストの見解:中国の競争力は限定的

しかし、リサーチ企業ラジオ・フリー・モバイルの創設者であるリチャード・ウィンザー氏は、フアン氏の中国市場への注目は「短期的すぎる」と指摘しています。ウィンザー氏によれば、中国は今後も数年間はアメリカにおける半導体技術の水準に追いつくことができず、他国への供給力を持つレベルに到達することは難しいと見られています。

中国市場からの売上を失っても、エヌビディアや他の西側企業は、他国市場でのシェア拡大によって回収可能であると同氏は述べています。ただし、その利益が実現するには時間がかかると見込まれています。

中国の半導体自立化とその限界

米中技術対立の激化を受けて、中国は自国の半導体技術開発に数十億ドルを投入し、依存脱却を図っています。現在、中国国内では7ナノメートルのチップ製造工場が12ヵ所以上建設中です。加えて、ファーウェイや中芯国際集成電路製造(SMIC)などの企業が、TSMC(TSM)やインテル(INTC)の技術を模倣して開発を進めています。

しかし、極端紫外線(EUV)露光装置の導入が不可能な状況にある中国では、高精度チップ製造において「製造工程の複雑化」や「歩留まりの低さ」といった課題に直面しており、結果として中国製チップのコストはエヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の製品より高くなると指摘されています。

世界市場における西側チップの優位性

今後、アメリカや中国以外の国がチップを調達する際には、コストと品質の面から西側製品を選択する傾向が強まる可能性があります。これは、中国製チップが割高であり、かつ中国政府との取引に伴う煩雑な規制が敬遠されるためです。

ウィンザー氏は、「中国がEUV技術を本格的に稼働させるまでには10年以上かかる」と見ており、技術面での格差が今後も続くと予測しています。そのため、「先進的なシリコンを使用した西側製チップの方が低コストであり、第三国にとってはより魅力的な選択肢となる」と述べています。

エヌビディアの株価と米政府のAI政策

一方で、エヌビディアの株価は最近上昇傾向を示しています。バイデン政権が進めていたAIチップ輸出に関する「AIディフュージョン・ルール」の撤回を巡り、トランプ大統領が独自の規制策を検討しているとの報道を受けて、株価は一時3%上昇しました。

エヌビディアは声明にて「AI政策に関する新たな指針を歓迎する」と表明し、「この政策転換によって、アメリカは次なる産業革命を主導し、高賃金の雇用創出や貿易赤字の緩和が期待できる」と述べています。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG