マーベル・テクノロジー(MRVL)の株価が5月7日午前の米国市場で11%下落し、市場に大きな波紋を広げています。同社は、6月10日に予定されていた投資家向けイベントを2026年に延期する(日程は未定)と発表しました。延期の理由として「ダイナミックなマクロ経済環境」を挙げていますが、市場はこれをネガティブに受け止めています。
このニュースは、2025年に入ってからすでに45%下落していた株価にさらなる打撃を与える形となりました。
AI銘柄としての地位が揺らぐ
マーベルは昨年、ブロードコム(AVGO)とともに人工知能(AI)分野への投資期待で脚光を浴びました。主な顧客にはグーグルの親会社であるアルファベット(GOOGL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)が含まれるとされ、エヌビディア(NVDA)の代替となるカスタムチップ設計企業として注目を集めました。
しかし、3月の決算発表で市場予想を下回るガイダンスを示したことから、AI銘柄全体への投資熱が冷め、同社株も急落しました。特にアマゾンの次世代AIチップ「Trainium 3」の開発に関して、台湾企業アルチップが設計を担当する可能性が報じられたことで、マーベルが機会を失うのではという懸念が強まっています。
業績見通しの修正と今後のイベント
同社は第1四半期の売上ガイダンスの中央値を再確認し、約18.75億ドル(±2%)としています。この点では一定の安定性を示していますが、投資家の懸念を払拭するには至っていません。
ウィリアム・ブレアのアナリストであるセバスチャン・ナジ氏は、マーベル・テクノロジーに対して依然としてアウトパフォームの評価を維持しています。株価は2025年度の予想利益に基づく株価収益率(PER)で21倍、2026年度の予想では18倍と、過去の40倍超の水準と比べて割安となっています。ただし、カスタムチップのパイプラインに対する投資家の信頼が回復するまでは、株価が一定のレンジ内で推移する可能性があると見られています。
6月のウェビナーが注目される
マーベルは6月17日にAIインフラ向けカスタムシリコン技術の将来についてのウェビナーを開催する予定です。これが投資家にとっての再評価の機会となる可能性があります。
ベンチマーク・リサーチのアナリストであるコディ・アクリー氏は、2026年度の売上予測を81.1億ドル(従来予想は81.9億ドル)、1株当たり利益を2.74ドル(従来は2.80ドル)に引き下げました。同時に目標株価も135ドルから95ドルへと引き下げましたが、株価の割安感を考慮し「買い」評価は維持しています。
信頼回復には時間が必要
マーベル・テクノロジーはAIブームの恩恵を受けた銘柄である一方、現在は成長性への疑念が重くのしかかっています。6月のウェビナーでの発表内容や今後の業績が、投資家の信頼を取り戻す鍵となりそうです。
*過去記事はこちら マーベル・テクノロジー MRVL