イギリスの半導体設計企業アーム・ホールディングス(ARM)は5月7日、2025年度第4四半期の決算を発表しました。調整後1株当たり利益は55セントとなり、ファクトセット調べのアナリスト予想の52セントを上回りました。売上高は12億4,000万ドルで、市場予想の12億3,000万ドルをわずかに上回る結果となりました。
見通しが市場予想を下回り、株価は8%下落
一方で、アームが発表した今四半期の売上見通しが市場の期待を下回ったことが投資家心理を冷やしました。アームの予測レンジの中央値は10億5,000万ドルで、アナリストが予想していた11億ドルを下回りました。この発表を受け、アームの株価は決算発表後に11%下落しました。
AI需要が追い風も、関税の影響には不透明感
アームのCEOであるレネ・ハース氏は投資家向けの書簡の中で、「AIは引き続きアームの省電力型コンピューティング技術への需要を押し上げており、これがより高いロイヤルティ率と市場シェアの拡大を実現している」と述べました。
また、投資家向けのカンファレンスコールにおいて、アームの経営陣は、チップのロイヤルティに関して関税の影響は限定的だとしつつも、最終市場での需要に対する影響については「可視性が低い」との見解を示しました。このような不透明感から、通年の業績見通しの提供は見送る判断となりました。
スマートフォンとAIチップ市場が成長の鍵
アームは自社のチップ設計を、アップル(AAPL)やクアルコム(QCOM)といったスマートフォンメーカーおよび半導体企業にライセンス提供することで収益を上げています。最新の先進的なチップアーキテクチャであるArmv9は、従来のArmv8と比べて高いロイヤルティ収入をもたらしており、マイクロソフト(NSFT)やエヌビディア(NVDA)向けのクラウドサーバー用高性能プロセッサにおいても進展が見られています。
関税政策の影響と今後の注目点
これまで、トランプ政権下では半導体が関税対象から除外されてきましたが、ホワイトハウス関係者によると、今後は別セクターとして新たな関税対象に含まれる可能性があるとしています。これにより、アームの顧客企業が製造コストの増加に直面するリスクも浮上しています。
それでも、アームの株価は年初来で約1%の上昇となっており、iシェアーズ・セミコンダクターETF(SOXX)の12%下落と比較して、相対的に堅調な推移を見せています。スマートフォン市場とAIチップ市場における主要顧客の業績が、一般的な半導体市場を上回っているとの期待が背景にあると見られます。
*過去記事「アームの決算は市場予想を上回るも株価下落、その背景とは?」