米国のテレヘルス企業であるヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)は5月5日、2025年第1四半期の売上高を5億8,600万ドルと発表し、アナリスト予想の5億3,900万ドルを上回る結果となりました。調整後EBITDAは9,110万ドルで、こちらも市場予想の6,100万ドルを上回っています。
この四半期では、GLP-1関連の売上が2億2,500万ドルとされており、加入者数は前年同期比38%増の約240万人となりました。1人当たりの月間平均収益は84ドルと、前年同期から大きく成長しています。
好決算を受け株価は5月6日午前の米国市場で11.7%高の46.8ドルと大きく上昇しています。
第2四半期および通年見通し
第2四半期の売上高ガイダンスは5億3,000万ドル〜5億5,000万ドルで、ファクトセット調べによる市場予想の5億5,300万ドルをやや下回りました。調整後EBITDAは6,500万ドル〜7,500万ドルの見通しで、市場予想の7,200万ドルとおおむね一致しています。
通年のガイダンスについては、売上高予想を据え置いた一方で、調整後EBITDAはわずかに上方修正しました。2030年の売上目標は65億ドル、調整後EBITDA目標は13億ドルと発表されました。これは市場予想(78億ドルの売上、12億ドルのEBITDA)と比較するとやや保守的な見通しです。
減量薬市場における展望と課題
2025年初頭、ヒムズ&ハーズはノボ・ノルディスク(NOVO.B)の「ウゴービ」の成分であるセマグルチドを調剤薬として提供し、大きな話題を集めました。特にスーパーボウル広告を含む大規模なマーケティング投資により、低価格の減量薬として注目されてきました。
しかし、FDAが供給不足の終了を発表したことで、5月22日以降は調剤によるセマグルチドの販売が制限されることとなり、成長ドライバーの1つが揺らいでいます。
それでも、ヒムズ&ハーズはノボ・ノルディスクと提携し、ブランド薬「ウゴービ」を月額599ドルで販売する計画を明らかにしています。これはノボ自身が提供する価格(499ドル)より高いものの、利便性や診療サービスを含めた価値提案として展開していくとしています。
経営体制の強化と今後の戦略
同社は4月にアマゾン(AMZN)でAmazon Pharmacyの立ち上げを指揮したナデル・カバニ氏をCOOとして迎え、オペレーションの拡充を図っています。これにより、薬品配送網やサプライチェーン管理の強化を進めると見られています。
長期的には、調剤セマグルチドの代替として個別処方のGLP-1製品を提供する戦略を掲げていますが、その適用対象や事業規模には依然として不確実性が残ります。
投資判断と市場の評価
ヒムズ&ハーズ・ヘルスの株価は、FDAの発表以降一時35%下落しましたが、それでも年初来で70%以上上昇しています。4月29日にはノボとの提携発表を受けて23%急騰しました。
一部アナリストは第1四半期の結果を評価しつつも、第2四半期以降の成長の持続性について慎重な見方を示しています。たとえば、シティ・リサーチのアナリスト、ダニエル・グロスライト氏は「我々は楽観と悲観の中間にある」と述べつつ、目標株価を25ドルから30ドルに引き上げましたが、投資判断は「売り」のままとしています。
今後の成長は、調剤薬からブランド薬への移行のスムーズさと、収益性をいかに維持できるかにかかっています。ヒムズ&ハーズ・ヘルスはそのプラットフォーム上で毎日1万~1万5,000人の患者を診療しており、その規模は引き続き大きな武器となる可能性があります。