トランプ政権が貿易協議に前向きな姿勢を示している中、一部のエコノミストは依然として米国経済の悪化リスクを懸念しています。投資家は、個人消費や企業の支出のさらなる減速というシナリオも視野に入れて対応を検討する必要があります。
景気後退リスクは依然として高水準
ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハッチウス氏は、今後12カ月以内に米国がリセッションに陥る確率を45%と予測しています。中国との貿易摩擦が依然としてリスク要因となっており、停止されていた「報復関税」が再び実施される可能性も指摘しています。
さらに、JPモルガンのエコノミストは、今年後半のリセッション確率を60%と見積もっており、より慎重な見方を維持しています。
生活必需品セクターは堅調
クロロックス(CLX)は最新の決算報告で、マクロ経済や地政学的な変化、関税の影響を踏まえた業績の下方修正を発表し、株価は2%下落しました。
ただし、生活必需品全体では依然として市場平均を上回るパフォーマンスを示しています。コカ・コーラ(KO)は2025年のダウ平均で最も好調な銘柄となっており、フィリップ・モリス(PM)もS&P500の中で高パフォーマンスを記録しています。また、コストコ(COST)、ウォルマート(WMT)、クローガー(KR)といった小売大手も今年に入って上昇傾向を維持しています。
ディフェンシブ銘柄への注目高まる
ボワーソック・キャピタル・パートナーズのCEO、エミリー・バウワーソック・ヒル氏は、市場の最近の上昇が「フェイクラリー(だまし上げ)」である可能性を指摘しています。同氏は、関税を巡る不透明な政策運営がすでに経済に悪影響を与えている可能性があると述べています。
その上で、ヒル氏は特定のセクターには依然として投資妙味があるとし、AIによる生産性向上の恩恵を受けるテクノロジーセクターへの投資を推奨しています。特にラム・リサーチ(LRCX)らの半導体製造装置メーカーを有望と見ています。
テクノロジー株は引き続き注目セクター
エヌビディアなどを含む「マグニフィセント・セブン」の一角を占める企業の好決算も、AI関連投資が鈍化していないことを示しています。アメリプライズのチーフ・マーケット・ストラテジストであるアンソニー・サグリムベーネ氏は、マイクロソフト(MSFT)やメタ・プラットフォームズ(META)の決算結果を例に挙げ、AI投資の継続性に対する市場の懸念を和らげたと述べています。
金融セクターは構造改革と利下げ期待が追い風
ヒル氏は、大手銀行がトランプ政権による規制緩和や今夏に予想されるFRBの利下げにより恩恵を受けると見ています。実際に、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなどを含む金融セレクト・セクターSPDR ETFは今年に入り2%上昇しています。
さらに、デジタル決済の普及が金融セクターの一部成長を促すとし、クレジットカード貸付業務を手がけるキャピタル・ワン(COF)に注目しています。
医療セクターは守りの投資先として健在
医療分野も引き続き堅調です。トランプ政権や保健福祉長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアによる規制改革への懸念があるものの、CVS(CVS)、シグナ(CI)、エレバンス・ヘルス(ELV)といった保険会社、イーライ・リリー(LLY)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、直腸鏡メーカーのインテュイティブ・サージカル(ISRG)、メドトロニック(MDT)といった製薬・医療機器企業は好調を維持しています。バイオ医薬のアムジェン(AMGN)にも投資妙味があります。
安定配当株の魅力も高まる
これらのディフェンシブ銘柄の多くは、安定した配当を提供しています。S&P配当ETFは年初来で横ばいですが、リセッション懸念による債券利回りの低下が続く中、配当株への関心は一層高まっています。安定したインカム収入を得ることは、投資家の安心材料となっています。