テスラ(TSLA)は、4月22日の米国市場終了後に発表した2025年第1四半期決算で、市場の予想を大きく下回る業績となりました。しかし、同社は2025年前半に新型車の投入を予定していると強調しました。
決算内容:売上・利益ともに予想を下回る
テスラは第1四半期の売上高が193.4億ドルと発表し、ブルームバーグの予想214.3億ドルを下回りました。前年同期の213億ドルからも減少しています。調整後1株当たり利益は0.27ドルとなり、市場予想の0.44ドルに届きませんでした。
ただし、自動車部門の粗利益率(規制クレジットを除く)は12.5%、全体の粗利益率は16.3%と、市場予想の16.1%をわずかに上回りました。
新型車とロボタクシーの計画は継続
テスラは以前から約束していた手頃な価格帯のEV(電気自動車)の投入計画について、2025年前半の生産開始に向けて順調に進んでいると発表しました。また、2026年にロボタクシーの量産を開始するという計画にも変更はないとしています。2025年6月にはオースティンでロボタクシーのテストを開始する予定と発表されました。
CEOイーロン・マスク氏の発言が株価を押し上げる
決算発表後のカンファレンスコールにて、CEOのイーロン・マスク氏は「5月からはDOGE(政府効率部門)への時間配分を大幅に減らし、テスラにより多くの時間を割く」と述べました。この発言を受けて、テスラの株価は時間外取引で5%上昇し、250.00ドルとなりました(通常取引終了時は237.97ドル)。
貿易政策と需要の不透明感が足かせに
同社は業績低迷の要因として、貿易政策の不確実性がグローバルサプライチェーンとコスト構造に悪影響を与えていると説明しました。「自動車およびエネルギー市場における不確実性が高まり続けており、急速に変化する貿易政策と政治的な風向きの変化が、短期的に我々の製品需要に大きな影響を与える可能性がある」と述べています。
マスク氏はカンファレンスコールで「トランプ大統領に『関税は低いほうが良い』と伝えたが、最終的な判断は大統領に委ねられている」と発言しました。
この影響もあり、テスラは2025年のガイダンスを次の四半期決算時に見直すと発表し、長期的な成長予測を撤回しました。
競争激化とブランドイメージの課題
テスラのコアビジネスである自動車販売は、需要低下が深刻化しています。2025年第1四半期の納車台数は33万6,681台と、予想の39万342台を大きく下回り、2022年第2四半期以来最悪の結果となりました。
競合の比亜迪(BYD)は販売台数を大幅に伸ばしており、テスラの市場シェアを侵食しています。さらに、トランプ大統領による25%の輸入関税導入を受けて、他の自動車メーカーが売上を伸ばしている中で、テスラは不利な立場に置かれています。
また、マスク氏の政治的スタンスやトランプ大統領との近さが、米国および欧州でのブランドイメージに悪影響を与えており、一部ではテスラのショールーム前での抗議活動や車両への破壊行為が報告されています。
今後の展望
テスラはコスト競争力を活かし、他社のEVに比べて価格面で優位性があると主張しています。マスク氏は「我々のロボタクシーはウェイモの高価なセンサー搭載車よりもはるかに安価である」と強調しました。
ただし、今後の市場動向は、貿易政策、政治情勢、そして競合との戦いによって大きく左右される見込みです。次回の決算発表において、テスラがどのような見通しを示すかに注目が集まります。
*過去記事はこちら テスラ TSLA