米ウォール街の大手証券会社は、エヌビディア(NVDA)が支援するコアウィーブ(CRWV)の株式についてカバレッジを開始し、概ね強気な見解を示しています。業界の規定に基づく「クワイエット・ピリオド(沈黙期間)」の終了を受けて、これらの評価が公表されました。
しかし、3月28日に株式市場にデビューした同社の株価は新規株式公開(IPO)価格40ドルを下回る36.25ドルで取引されており、投資家からの関心は今ひとつのようです。
AIインフラ市場での優位性が評価材料に
コアウィーブは、AI開発の競争が激化する中で極めて重要なエヌビディア製GPUを備えたデータセンターの提供を行っており、この分野で強固な地位を築いています。ニュージャージー州リビングストンに本社を置く同社は、32か所のデータセンターに25万台以上のGPUを保有し、その多くがエヌビディア製となっています。
JPモルガンは「コアウィーブは次世代GPUの導入において常に先行しており、他のハイパースケーラーが業界リーダーの座を主張するのは難しい」と評価しています。
顧客集中と市場の不透明感に警戒感も
一方で、証券各社は顧客集中によるリスクにも注意を促しています。2024年時点で同社の売上の77%は、マイクロソフト(MSFT)ともう1社の上位2社からもたらされており、この依存度の高さが懸念材料とされています。
モルガン・スタンレーは「マクロ経済や株式市場の不透明さが、投資家の積極性を制限する可能性がある」と述べており、中立的な「イコールウェイト」評価を付けました。
また、コアウィーブはIPO直前にオープンAIと119億ドル規模、5年間の契約を結んだことが報じられており、この関係性が今後の業績に大きな影響を与える可能性もあります。
バークレイズは「マイクロソフトおよびオープンAIとの関係はプラスにもマイナスにも働く可能性がある。特定顧客への依存度の高さは明確なリスクである」と指摘しています。
主な証券会社の格付けと目標株価
以下は、主要証券会社によるコアウィーブ株の格付けおよび目標株価の一覧です。
- ジェフリーズ:買い推奨、目標株価51ドル
- JPモルガン:オーバーウェイト、目標株価43ドル
- バークレイズ:オーバーウェイト、目標株価48ドル
- モルガン・スタンレー:イコールウェイト、目標株価46ドル
- ゴールドマン・サックス:中立、目標株価54ドル
株価の乱高下に警戒が必要
JPモルガンは、「コアウィーブ株は乱高下しやすく、安定的な投資を求める投資家には不向きかもしれない」との見解も示しています。同社のビジネスは多額の借入に支えられており、資本集約型である点にも注意が必要です。
IPOはモルガン・スタンレー、JPモルガン、ゴールドマン・サックスを中心とする18行のシンジケートによって引き受けられており、AI関連株およびIPO市場全体の投資家心理を占う試金石とも位置付けられています。今後の株価動向は、AI市場への関心とともに注視されることとなります。