TSMCで知られる台湾積体電路製造(TSM)は4月17日、2025年に向けた成長見通しに対する懸念が高まる中で、2025年3月期の四半期業績が市場予想を上回ったことを発表しました。米国による追加関税の可能性を受けて、エヌビディア(NVDA)やアップル(AAPL)向けを含む先端半導体の在庫積み増しが進み、売上が大きく押し上げられた格好です。
純利益は新台湾ドル3,616億元(約111億ドル)に達し、市場予想の3,468億元を上回りました。売上は前年同期比42%増で、スマートフォンやノートパソコンなどの電子機器の米国向け出荷が業績を押し上げました。
米中対立が市場に与える圧力とTSMCの対応
エヌビディア向けAIチップの輸出制限や、オランダの半導体製造装置メーカーであるASMLホールディング(ASML)の業績見通しの下方修正など、米中対立を背景に半導体市場には不透明感が漂っています。こうした要因が重なり、両社を含む半導体セクターでは16日、1日で約2,000億ドルの時価総額が失われる事態となりました。
関税の影響は世界経済全体に広がる懸念もあり、エヌビディアを筆頭とするTSMCの主要顧客の購買行動の変化が、同社の収益に直接影響を与えるリスクが高まっています。
2025年に向けた強気のガイダンスと投資計画
TSMCは2025年の売上成長率を20%台半ばとする見通しを維持し、1月に発表した目標を据え置いています。また、設備投資額も380億〜420億ドルの範囲で継続する意向を示しており、3月にトランプ米大統領と共に発表した1,000億ドル規模の米国内追加投資計画がある中でも、その姿勢は変わっていません。
ブルームバーグ・インテリジェンスによれば、ASMLの極端紫外線(EUV)露光装置の受注額が前年同期比で83%増の12億ユーロとなった背景には、TSMCの生産能力拡大計画があると指摘されています。これにより、TSMCの長期的成長への期待も継続しています。
不確実性の中に潜むリスクと市場の反応
ただし、米国の新たな輸出制限により、エヌビディアのAIチップ(H20など)の需要が不安定となっており、TSMCの売上成長や設備拡張計画に影響が及ぶリスクも指摘されています。こうした不確実性は、アナリストの間でも注視されており、成長ガイダンスの下方修正や撤回の可能性にも言及がなされています。
株価の動向とバリュエーション評価
2025年に入ってからのTSMCの株価は約20%下落しており、12ヶ月先の予想利益に基づく株価収益率(PER)は14倍と、過去3年間の平均である16倍を下回っています。また、これはフィラデルフィア半導体指数の平均をも下回る水準です。半導体関連銘柄全体が22%以上の下落を記録する中、S&P500指数の10%下落と比較しても、より厳しい状況が浮き彫りになっています。
今後の注目点:米国での投資と市場環境の変化
TSMCは米国市場において1,000億ドル規模の追加投資を計画しており、この投資が今後の収益構造や成長戦略にどのような影響を与えるかが、投資家にとっての注目材料となります。半導体産業が直面する地政学リスクや需要不確実性を乗り越えられるか、TSMCの今後の動向から目が離せません。