アメリカの航空機大手ボーイング(BA)の株価が4月15日の米国市場で2.36%下落し、155.52ドルとなりました。これは、中国政府が国内航空会社に対し、同社からの航空機の受け取りを停止するよう命じたことが報じられたためです。
米中貿易摩擦が再燃、航空機産業に影響
ブルームバーグによると、中国の航空会社には、ボーイングからの新たな機体の受け取りを中止するよう命じられ、さらにアメリカ企業からの航空関連部品の購入も控えるよう指示が出されたとされています。
この報道を受け、S&P500は0.17%、ダウ平均は0.38%下落しました。一方で、ヨーロッパ市場ではエアバスの株価が1.21%上昇しました。
中国市場の重要性とリスク
ボーイングの株価は、4月2日にトランプ大統領が関税導入を発表して以降、約6%下落しています。関税によるコスト上昇の懸念に加え、ボーイングは輸出比率が高いため、報復措置によるリスクにもさらされています。2024年には、同社の商業航空部門の売上の約70%が海外市場向けとなっています。
アメリカは最初に中国製品に34%の関税を課しましたが、その後、中国からの報復を受け、関税率は145%に引き上げられました。
中国向けの受注数は限定的も、その影響は大きい
ジェフリーズのアナリスト、シーラ・カヤオール氏は、現在のボーイングのバックログ(受注残)のうち、中国向けは約130機に過ぎないと指摘しつつも、中国市場の重要性を軽視することはできないと述べています。同氏は、同社株を「買い」と評価し、目標株価を220ドルとしています。
また、香港を含めると中国向けの受注は約160機となり、全体の約3%を占めます。対して、エアバスのバックログに占める中国向けの比率は約6%とされています。両社のバックログには「非公開」の顧客も含まれており、その一部が中国向けと見られています。
長期的な中国市場の需要とボーイングの展望
2018年の737 MAXの全世界的な運航停止以前、中国市場はボーイングの納入数の約25%を占めていました。同社は今後20年間で、中国市場が約9,000機の航空機を必要とするとの見通しを持っており、エアバスと市場シェアを分け合うことを目指しています。
他の影響事例とアナリストの見解
ヨーロッパ最大の格安航空会社ライアンエアーは、関税が航空機価格に影響を与える場合、ボーイング機の受領を遅らせる可能性があると警告しています。
ウェルズ・ファーゴのアナリスト、マシュー・エイカーズ氏は、世界的な景気減速が航空機の新規受注とアフターマーケットに影響しているとして、ボーイング株の目標価格を111ドルに引き下げ、「売り」と評価しています。
広がる貿易戦争の余波、他産業にも波及
この米中貿易戦争の影響は航空産業にとどまらず、テスラ(TSLA)も中国向けのモデルSおよびモデルXの受注を停止しています。中国はまた、自動車やドローン、ミサイル製造に必要な重要鉱物の輸出を停止しており、幅広い産業にコスト上昇と供給の混乱をもたらす懸念があります。
このように、ボーイングをはじめとするアメリカの製造業は、米中間の貿易摩擦の最前線に立たされており、その動向には今後も注目が必要です。