スマートフォンやノートパソコンなど電子機器に対する関税に関して、週末にトランプ政権から相次いだ矛盾した発表が、米国の貿易政策への不透明感を再び強めています。この影響でウォール街とワシントンは再び混乱の様相を呈しています。
一時的な関税免除報道にテック業界が反応
米国税関・国境警備局が4月11日に発表した通知により、コンピューター、タブレット、アップルウォッチ、モニター、半導体製造装置などが関税の対象外になると見られ、一時的にテクノロジー業界は安堵の声を上げました。これらの製品は、中国からの輸入に課せられていた125%の「報復関税」や米国全体の輸入品に対する10%の関税から除外されるとの解釈が広まりました。
しかし12日、トランプ大統領は大統領専用機内で記者団に対し「14日に詳しく説明する」と述べ、状況は明確にはなりませんでした。
政府内での発言の食い違いが混乱を加速
13日には、商務長官のハワード・ラトニック氏が、関税免除となった製品群については、半導体を対象とする別の貿易調査に基づいて、1~2か月以内に新たな関税が課されると発言。さらにホワイトハウスの通商顧問ピーター・ナバロ氏も「免除も除外も存在しないのが正式な政策である」と発言しています。
同日、トランプ大統領もSNS「トゥルース・ソーシャル」で「11日に発表されたのは関税免除ではない」と明言し、製品群は半導体と共に別の関税カテゴリーに移行すると説明しました。
テクノロジー株の乱高下が市場を揺らす
この発表により、一時的に関税回避の期待が膨らみましたが、新たな関税導入の可能性が高まったことで、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、グーグルを擁するアルファベット(GOOGL)などの株価は乱高下を見せ、米国株式市場全体に不安が広がっています。
消費者心理とインフレへの影響も深刻化
トランプ政権の関税方針の揺れは、消費者心理を冷やし、インフレ懸念も高めています。Rストリート研究所のアダム・ティーラー氏は「このような関税政策の迷走は、AI分野での米国の競争力を損なう恐れがある」と警鐘を鳴らしています。
また、ミネアポリス連邦準備銀行のニール・カシュカリ総裁は「この10年で最大級の信頼感への打撃であり、経済全体に大きな影響を与える可能性がある」と述べました。
大手企業の決算発表が注目される
今週はゴールドマン・サックス(GS)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、シティグループ(C)、ユナイテッド航空(UAL)などの第1四半期決算が控えており、関税の影響がどのように業績に表れるかが注目されています。
テクノロジー業界にとっての一時的勝利か
今回の免除措置が維持されれば、アップル、サムスン電子、ヒューレット・パッカード(HPQ)、デル、マイクロソフトなど、海外で電子機器を生産する企業にとっては一時的な恩恵となります。該当する製品群のうち81%のスマートフォン、78%のモニターが中国からの輸入であり、関税の影響を大きく受けることになります。
しかし、これらの製品は今後、国家安全保障を理由に輸入規制が課される「セクター別関税」の対象となる見込みです。
生産拠点の国内回帰は現実的か?
ラトニック商務長官は、米国内に新しい電子機器工場が建設され、「何百万人ものアメリカ人がiPhoneのネジを締める作業に従事する」と語っていますが、アナリストの多くは、人件費の高さや産業構造の違いから、製造拠点の米国回帰は非現実的であると指摘しています。
貿易交渉の行方と今後の展望
ホワイトハウスは現在、日本、台湾、イスラエルなど70か国以上と貿易交渉を開始しており、中国との交渉については「招待はしているがまだ対話は始まっていない」としています。
今後の関税政策や貿易交渉の進展次第で、米国経済や株式市場の行方は大きく左右される可能性があります。投資家にとっては引き続き、政権の発表や企業決算に注視することが重要です。