ネットフリックス(NFLX)は、関税と直接的な関係が薄い企業として知られていますが、米中貿易戦争の影響が経済全体に波及する中で、その業績への間接的な影響に注目が集まっています。株価が過去最高値からやや落ち着いた現在、今週4月17日の四半期決算発表に多くのアナリストが注目しています。
関税の影響は限定的でも、視聴者と広告主への影響に注目
オッペンハイマーのアナリストは今月のリサーチノートで、ネットフリックスは関税からの影響が「ほとんどない」と評価しています。しかし、同社のサービスを利用する視聴者や、その雇用主、そして広告を出す企業には経済全体の動向が影響するため、注意が必要です。
生活費の高騰に直面する中でも、家庭内での娯楽としての価値が高いネットフリックスは、支出削減の対象になりにくいとの見方が広がっています。今年1月に価格改定があったにもかかわらず、その傾向は変わっていません。
ネットフリックスは「景気抵抗力あり」も、完全な免疫ではない
モーニングスターのアナリスト、マット・ドルジン氏は、ネットフリックスが不況に完全に強いわけではないものの、ある程度の「景気抵抗力」は持っていると指摘しています。消費者が支出を見直す際も、ネットフリックスは節約対象になりにくく、多くの家庭にとっては削りにくい固定支出となっている可能性があります。
今回の決算は「加入者数なし」の初決算、注目される新指標
今回の決算は、これまで注目されてきた加入者数の公表がなくなる初めての発表となります。そのため、アナリストたちは経営陣のコメントや「視聴時間」やニールセンのデータといった他の指標に注目しています。
ベンチマーク・エクイティ・リサーチは、スポーツ中継、ライブイベント、ゲームなど新たな取り組みや、YouTubeとの競争、広告予算の動向に注視する必要があると述べています。広告主の間では、トランプ大統領による新たな輸入税引き上げとそれに対する各国の対応により「予算の不安」が広がっており、広告出稿に慎重な動きが見られるようです。
生産コストの上昇と業界全体の停滞もリスク要因に
ネットフリックスは中国市場には進出していませんが、世界的な景気後退が起これば、制作費や広告費の削減圧力が強まる可能性があります。特に映画やテレビ番組の撮影に必要な機材コストが、関税の影響で上昇することも想定されます。
競合他社がストリーミング事業の利益を確保しつつコスト削減を進める中で、新作コンテンツの供給が減少するリスクも無視できません。
ネットフリックスはストリーミング戦争の「勝者」か?
ネットフリックスは、ストリーミング戦争において優位な立場を築いていると評価されています。トランプ大統領の発表によって株価は一時下落しましたが、その後の緩和的な発言を受けて持ち直し、過去12ヶ月では約47%の上昇を記録しています。ただし、2月に記録した最高値からは若干の下落が見られます。
ドルジン氏は、ネットフリックスの長期的な成長可能性を評価しつつも、現在の株価は割高であり、北米市場の加入者飽和を考慮すると過去数年のような急成長を期待するのは難しいとの見方を示しています。
ネットフリックスが家庭の定番ストリーミングサービスである理由
ネットフリックスは、多くのユーザーにとって「何か面白い番組があるかもしれない」と思ってアクセスするサービスであり、他の配信サービスが「見たい番組があるから利用する」という使い方と対照的だといわれています。
また、ニューヨーク大学のスコット・ギャロウェイ教授のコメントを引用し、ベンチマークのアナリストたちはネットフリックスを「家庭におけるストリーミングサービスの中核的存在」と表現しています。昨年後半には1人当たりの視聴時間が約5%減少したものの、ネットフリックスの継続率はディズニープラスやアップルTVよりも高いとする調査結果もあります。
アルゴリズムによる番組推薦機能の優位性も、ユーザーの継続利用を支える要素となっています。
まとめ
ネットフリックスの今後の業績は、景気動向や広告市場の変化、新たな成長戦略など、複数の要因に左右されることになります。しかし、家庭内エンタメの中心的存在としての地位と、高い継続利用率は同社の安定性を支える強力な要素です。今週の決算発表では、これらの要因がどのように反映されるかが注目されます。
*過去記事はこちら ネットフリックス NFLX