テキサス・インスツルメンツ株が急落!米中摩擦と需要減退で52週安値を更新

  • 2025年4月12日
  • 2025年4月12日
  • BS余話

米半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TXN)の株価が4月11日の米国市場で急落し、52週安値を更新しました。4月初旬からすでに20%以上の下落を記録しており、特に4月の第2週には、わずか2日間で大きな下げ幅を見せました。

この下落の背景には、米中間の貿易摩擦の激化と、半導体需要の鈍化があると見られています。

中国からの輸入規制の強化が発端に

今回の急落は、中国半導体産業協会がチップ輸入の原産地に関する緊急通知を発表したことが発端となりました。これは米国との対立が再び激化していることを示すもので、特に中国に大きな事業基盤を持つテキサス・インスツルメンツにとっては深刻な打撃となりました。
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株価は11日午前の段階で9.3%下落し、142.09ドルまで落ち込みました。一時は139.95ドルという水準まで下がり、これは2023年10月以来の安値です。同日、S&P500種指数とナスダック総合指数が上昇しているにもかかわらず、同社の株は逆行安となりました。

また、同業のインテル(INTC)の株価も同日一時6.5%下落しています。

トランプ大統領による輸入税構想が懸念材料に

4月2日にトランプ大統領が発表した全世界からの輸入品に対する10%の包括的な関税構想も、投資家心理を冷やしています。現在この構想は一部後退していますが、中国からの輸入品に対しては関税強化の姿勢を継続しており、半導体業界には今後も不透明感が残ります。

JPモルガンは、現時点で半導体は直接的な関税の影響は小さいと分析していますが、状況の変化には注意が必要としています。特に、トランプ大統領が「非常に近いうちに」半導体輸入に関税を課すと発言したことは、さらなる不安材料となっています。

組立・テスト工程が海外依存の構造的リスク

米国で設計されたチップの多くは、組立・パッケージング・テストといった工程を海外で行っており、そのまま中国の製造業者に出荷される構造になっています。このため、完成品価格の上昇が需要減退につながる可能性があると見られています。

JPモルガンは、価格上昇が最終製品の需要を押し下げ、産業・自動車向けなど幅広い分野での消費減退を引き起こす懸念を指摘しています。

国内外での需要減速も重荷に

中国情勢に加えて、米国内でも自動車業界の需要低迷や在庫調整の影響が継続しています。キー・バンク・キャピタル・マーケッツのアナリストは、これがテキサス・インスツルメンツの業績をさらに圧迫する要因になると分析しています。

同社はアナログおよび組込み半導体に強みを持ち、産業用途や自動車用途を主力としています。これは、エヌビディア(NVDA)のようにデータセンター向けGPUでAI分野をけん引している企業とは大きく異なります。

CHIPS法による資金支援とトランプ発言

テキサス・インスツルメンツはCHIPS法に基づく支援金を受けた企業のひとつで、2023年12月にはテキサス州およびユタ州での製造拠点拡張に向けて最大16億ドルの補助金を獲得しています。

しかしトランプ大統領は、3月にこの法律の廃止を求める発言をしており、代わりにその財源を国債返済に充てるべきだと主張しました。また、TSMC(TSM)に対しても米国内での工場建設を強く求め、補助金に頼らず1000億ドル規模の投資を決断させたと発言しています。

2018年との類似と今後の見通し

JPモルガンは今回の状況を2018年の米中貿易戦争に例えています。当時も関税の影響で需要が鈍化し、特に産業・自動車・エンタープライズ分野での需要が減少しました。

今回も同様に、半導体各社は保守的な業績見通しを示すことが予想され、1株当たり利益の予想引き下げが続く中で株価が底打ちしていくと見られています。特にチップ設計ソフトウェア分野は比較的防御力が高く、メモリ関連銘柄はより大きなボラティリティを示す可能性があるとのことです。

今後の業績発表シーズンでは、企業の慎重なガイダンスと共に市場の反応が注目されることになりそうです。

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