アメリカと中国の関税戦争が激化する中、アップル(AAPL)は巧妙な対策を講じる可能性があると、モルガン・スタンレーのアナリスト、エリック・ウッドリング氏が指摘しました。
同氏は、iPhoneの価格を引き上げる必要はなく、すでに稼働しているインドでの生産を拡大することで関税の影響を最小限に抑えることができると述べています。
iPhone価格を上げずに利益を維持する戦略
ウッドリング氏によれば、アップルが米国向けのiPhone供給を完全に中国から切り離すには、インドでの生産台数を倍増させる必要があります。現在、インドでは年間3,000万~4,000万台を生産しており、そのうち1,200万台以上が現地市場向けとなっています。
また、低ストレージ構成のiPhoneの販売を終了し、平均販売価格を引き上げる戦略もあります。たとえば、iPhone 17 Proの256GBモデルを、現在のiPhone 16 Proの同容量モデルと同じ価格で提供し、128GBモデルを廃止することで、表面上の価格は据え置きながら実質的な価格アップを実現できます。
分割払いの延長で価格負担の軽減も
加えて、アップルは分割払いプランの柔軟性を高める可能性も示唆されています。現在はApple Cardを通じて24か月分割払い(3%のキャッシュバック付き)を提供していますが、これを36か月に延長することで、月々の支払額を1,099ドルのiPhoneで45ドルから30ドルに減らすことができます。これにより、Apple Cardの利用者も増加する可能性があります。
トランプ大統領の関税政策が市場に影響
4月9日にはアップル株が1998年以来の上昇を記録しましたが、翌10日には前日比4.2%下落しました。これは、トランプ大統領が中国からの輸入品にかかる関税を125%から145%に引き上げた影響とみられています。
ハードウェア企業の中でアップルが最も影響を受けやすい
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ワムシ・モハン氏によると、ハードウェア業界の中でもアップルは関税の影響を最も受ける可能性が高いとされています。デル・テクノロジーズ(DELL)、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)、HP(HPQ)なども高い関税が予測されています。
一方で、IBM(IBM)、ネットアップ(NTAP)、コーニング(GLW)は、アメリカ国内での生産比率が高いため、関税の影響は比較的軽微とされています。
アップルの製造拠点の内訳と今後の展望
モハン氏の推計では、アップル製品の約70%が中国で製造されており、次いでインドが10%、その他の国々(ベトナム3.5%、マレーシア3%、韓国0.3%、台湾0.2%、アメリカ5%)となっています。
それでも、アップル株に対しては依然として強気の姿勢を同氏とそのチームは維持しています。過去にも複数回のPERの圧縮後に株価が回復した実績があるため、今回も同様の動きが期待されていると見ています。
*過去記事はこちら アップル AAPL