アマゾン(AMZN)の最高経営責任者アンディ・ジャシーは4月10日、2025年の年次株主書簡の中で、同社が世界に対してより大きな影響を与えることを目指す姿勢を示しました。特に注目されたのは、新たな成長分野として「生成AI」に注力するという方針です。
書簡では、アマゾンのリーダーシップの姿勢や「地球上で最も顧客中心の企業になる」という使命が改めて強調されました。
地方への配送拡充とプロジェクトカイパーによる接続性の向上
ジャシーCEOは、より多くの顧客にサービスを届けるための取り組みとして、地方都市への迅速な配送サービスの拡大や、「プロジェクトカイパー」を通じた新しい市場開拓を挙げました。
プロジェクトカイパーは、低軌道衛星を活用してブロードバンド接続を世界中の何百万世帯に提供することを目的としています。
生成AIがもたらす産業革命の可能性
ジャシー氏は、生成AIが「既存のあらゆる顧客体験を再定義し、これまで想像の中にしかなかった新たな体験も実現する」と述べました。この技術は単なる生産性向上にとどまらず、医療やロボティクスといった産業全体を変革するとしています。
また、生成AIは競合との競争力を保つために不可欠な技術であり、「顧客体験にこのインテリジェントモデルを取り入れない限り、競争の土俵に立つことさえ難しい」と強調しました。
AIインフラへの積極投資とエヌビディアへの言及
アマゾンは、AI関連のデータセンター、チップ、ハードウェアへの巨額投資を進めています。ジャシー氏は「現在の高コスト構造は主にチップが原因であり、AIのコストは今後下がっていく」と指摘しました。
現在、AIの多くはエヌビディア(NVDA)のチップに依存していますが、アマゾンはこれに対抗する形で、独自のカスタムチップ「Amazon Trainium」を開発しています。これにより、AIのトレーニングや推論のコスト削減を図ります。
将来のAIコストの中心は「推論」
ジャシー氏は、将来的にAIのコストの大部分を占めるのはトレーニングではなく「推論(インファレンス)」になると述べています。モデルのトレーニングは定期的に行うのに対し、推論は日常的かつ大量に発生するためです。
推論は、今後「計算、ストレージ、データベース」と並ぶ基盤的なサービスとなると予測しています。
アナリストの評価と今後の見通し
証券会社パイパー・サンドラーのアナリストであるトーマス・チャンピオン氏は、アマゾンの年間広告売上成長率の見通しを引き下げたことにより、目標株価を従来の265ドルから215ドルに引き下げました。ただし、同氏は引き続きアマゾン株に対して「オーバーウェイト(買い推奨)」の評価を維持しています。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN