TSMCとして知られる台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)は4月10日、2025年第1四半期の売上高が前年同期比42%増の8,392億5,000万台湾ドル(約255億米ドル)となり、市場予想を上回ると発表しました。これは2022年以来の最速の成長率であり、人工知能(AI)サーバーおよびスマートフォン向けの需要が拡大していることを反映しています。
特に米国での関税強化を前に、電子機器メーカーが商品を米国の倉庫に事前に出荷・備蓄する動きが広がったことが売上拡大に貢献しました。
アップルとエヌビディア向けの需要が堅調
TSMCは、アップル(AAPL)やエヌビディア(NVDA)といった大手ハイテク企業向けに先端半導体を供給しており、これらの需要の高まりが収益に直接寄与しました。市場では8,305億台湾ドル程度の売上を見込んでいましたが、それを上回る実績を示しています。なお、詳細な四半期決算の発表は来週を予定しています。
アメリカでは、関税の影響を懸念して、週末にかけて多くの消費者がアップルのiPhoneを購入する動きが見られ、価格上昇前の駆け込み需要が鮮明となっています。
トランプ氏との1000億ドル規模の米国内投資を発表
TSMCの魏哲家CEOとトランプ氏は3月、米国での半導体製造に追加で1,000億ドルを投資する計画を共同で発表しました。これは製造業を米国に呼び戻すというホワイトハウスの目標を後押しするものとされており、トランプ氏は関税政策がこの投資決定の背景にあると述べています。
データセンター投資に一服感も、AI関連支出は継続
一方で、マイクロソフト(MSFT)がシカゴやジャカルタなどでのデータセンター計画を見直す動きを見せるなど、AI関連インフラ投資のペースに減速の兆しも見られます。ただし、アルファベット(GOOGL)やメタ・プラットフォームズ(META)などの他の大手IT企業は、数百億ドル規模のAI投資計画を維持しており、縮小を示唆する発言は見られていません。
アマゾン・ドット・コム(AMZN)も、今年だけでAI関連投資に1,000億ドルを投じる方針を示しており、TSMCの先端半導体の需要は引き続き堅調である可能性があります。
年間成長見通しには不透明感も
一部アナリストは、世界経済の不確実性や米国の半導体輸入への追加関税リスクを背景に、TSMCが年間の成長見通し(前年比20%台半ば)を下方修正する可能性を指摘しています。
とはいえ、TSMCはAIやスマートフォン向けの先端半導体製造において世界をリードする存在であり、たとえ貿易の混乱や関税強化があっても、その影響を緩和する力を持っていると考えられます。
*過去記事はこちら TSMC