2025年の景気後退懸念が高まる中で、高配当株、特に「配当貴族」と呼ばれる企業群への関心が再び強まっています。最近の市場の動向を見ると、その注目度の高さには十分な理由があります。
4月2日、トランプ大統領による予想を超える関税発表が引き金となり、S&P500はわずか4日間で12.1%の急落を記録しました(出典:S&P Dow Jones Indices)。しかし、関税の一部撤回により市場は急反発。このような極端な価格変動は、投資家の不安定な心理を反映していると言えます。
このような状況下で配当株に注目が集まるのは、将来の値上がり益を期待する投資よりも、確実性のある「キャッシュフロー」を得るという視点が重視されているからです。なかでも配当貴族は、25年以上にわたり毎年配当を増加させてきた企業群であり、財務の健全性や利益安定性が強く評価されています。
配当貴族のパフォーマンスは安定志向の投資家に向く
配当貴族を構成する企業の一例として、コカ・コーラ(KO)、コルゲート・パルモリーブ(CL)、コンソリデーテッド・エジソン(ED)、キャタピラー(CAT)などが挙げられます。これらの企業は、多くが景気に左右されにくいビジネスモデルを持ち、配当の持続性が高いとされています。
過去の大きな市場調整局面(例えば、2000年代初頭のITバブル崩壊、2008年の金融危機、2020年のコロナショックなど)を振り返ると、S&P500が平均で約40%のピークからの下落を記録する中、配当貴族は約25%の下落にとどまっています(出典:ProShares社のETFデータ)。このことからも、配当貴族が持つ「下落耐性」の強さが裏付けられます。
また、現在の配当貴族の平均利回りは約2.8%とされており(出典:ProShares)、これは長期債利回りと比較しても魅力的な水準です。さらに、過去12カ月のフリーキャッシュフローの約65%が配当に充てられており、利益水準と配当支払いのバランスも健全です。
景気後退とスタグフレーションリスクへの備え
現在の経済環境では、企業業績の鈍化とインフレの継続が同時に起こる「スタグフレーション」が懸念されています。バークレイズの株式戦略責任者によれば、S&P500の2025年予想利益が現状よりも大幅に下方修正されるリスクもあるとしています(出典:Barclays Research)。
こうした経済の二重苦に対しては、価格変動リスクの高いグロース株よりも、安定した配当を継続的に支払う企業の方が、リターンの源泉を見失いにくいというメリットがあります。実際、1970年代のスタグフレーション期にも、S&P500のトータルリターンの大部分は配当再投資によるものでした(出典:CRSPデータベース)。
今後の投資戦略における配当株の役割
市場はまだ完全な安定には程遠く、次の5%の動きが上昇か下落かを予測するのは難しい状況です。このような不確実性の中で、安定したインカム収入をもたらし、かつ市場平均よりも下落に耐性のある配当貴族は、守りを重視する投資家にとって重要な選択肢となります。
短期的な株価の変動に一喜一憂するよりも、中長期での資産形成を重視する投資家にとって、安定配当株はポートフォリオの心強い柱となる可能性が高まっています。今後の政策動向や経済指標を注視しつつ、こうした防御型資産の価値を再認識することが求められています。