米議会が立ち上がる!新・関税政策をめぐるトランプ政権との綱引き

  • 2025年4月10日
  • 2025年4月10日
  • BS余話

2025年4月、米国では貿易政策をめぐる緊張が再び高まっています。ドナルド・トランプ大統領が、新たに10%の包括的関税と、貿易赤字国に対する追加関税を打ち出したことにより、議会の権限と行政権のバランスが再び問われる状況になっています。

このテーマについて、ジョージ・ワシントン大学政治管理大学院のLegislative Affairsプログラム・ディレクターであるケイシー・バーガット氏が、投資情報誌「バロンズ」に寄稿し、議会の関税権限の形骸化とその是正の必要性を指摘しています。

関税権限の委譲が生んだ大統領の裁量拡大

バーガット氏によると、米国憲法は関税を含む税の賦課権限を議会に明確に与えているにもかかわらず、20世紀以降、議会はその権限を大統領に徐々に委譲してきたといいます。特に1934年の相互通商協定法、1962年の貿易拡大法(第232条)、そして1974年の通商法(第301条)がその根拠とされ、大統領には国家安全保障や不公正な貿易慣行を理由に、単独で関税を発動する余地が与えられてきました。

トランプ氏は第1期政権でもこうした法的根拠を活用し、鉄鋼・アルミニウム関税や対中制裁関税を実施しましたが、第2期ではさらに踏み込んだ内容となっています。とりわけ、「貿易赤字=経済的損失」とする主張のもと、関税政策を政治的な手段として積極的に用いている点に懸念が集まっています。

新関税が家計と同盟国に与える影響

バーガット氏は、こうした一方的な関税政策がもたらす経済的・外交的リスクも指摘しています。例えば、イェール大学のBudget Labは、新関税が米国の世帯に年間平均3,800ドルの追加負担を与える可能性があると試算しており、低所得層への影響が特に大きいと見られています。

また、報復関税による農業分野への打撃や、同盟国との関係悪化といった副作用も無視できません。カナダやEUなどからの報復措置は、米国の輸出産業や雇用に直接的な悪影響を与える可能性があり、外交上の足かせにもなりかねません。

超党派で進む議会の巻き返し

こうした背景のもと、共和党のチャック・グラスリー上院議員と民主党のマリア・キャントウェル上院議員が、「貿易見直し法案(Trade Review Act)」を提出しました。この法案は、関税を国家安全保障に基づいて発動する際、国防総省の認定と議会による60日以内の承認を義務付ける内容です。柔軟性を残しながらも、大統領による一方的な判断に歯止めをかける目的があります。

この法案には複数の共和党議員も賛同しており、下院でも同様の動きが広がっています。ただし、トランプ大統領はこのような法案に対して拒否権を行使すると明言しており、成立には上下両院の3分の2の賛成票が必要という高いハードルがあります。

民主主義の根幹として関税は議論すべき課題

バーガット氏は、貿易政策の決定には慎重な審議と透明性が不可欠であり、議会がその本来の役割を果たすべきだと述べています。短期的な政治的利得による関税政策が長期的な経済と外交の安定を損なう可能性がある今、立法府によるチェックとバランスの機能回復が求められているとする見解は、民主主義の本質を問い直すものでもあります。

現在の米中関係、ロシア・ウクライナ戦争、そしてグローバル・サプライチェーンの再構築といった国際情勢を踏まえれば、米国が同盟国との連携を強化すべき局面であることは明白です。その中で、貿易政策の舵取りを誰が担うべきかという議論は、今後の米国経済と世界秩序にとっても重要な意味を持ちます。超党派での成立を目指す動きが加速するかどうかが注目されています。

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