2025年4月8日、米国株式市場は激しいボラティリティの中で取引を終え、主要株価指数のS&P500は1.6%下落しました。この下げにより、S&P500は2月の高値から20%安に迫り、いわゆる「弱気相場(ベアマーケット)」の定義に近づいています。
背景には、米中間で再び緊張が高まっている貿易政策の問題があります。ホワイトハウス関係者によると、アメリカは中国に対する関税を最大104%まで引き上げる方針を進めており、これが市場の懸念材料となっています。一方、中国の李強首相は、対外的なショックを相殺するための政策ツールがあるとし、報復的な対応を示唆しました。
政策不確実性が市場を揺らす構図
今回のような相場の急変には、「政策の方向性が見えないこと」が主因として挙げられます。資産運用会社リサーチ・アフィリエイツの見解では、明確なルールや目標が不透明であるため、投資家心理が不安定になっているとの指摘があります。
このような不透明な状況下では、金融市場における「希望」と「恐怖」の間で株価が激しく揺れ動きやすくなるとされます。市場ではアルゴリズムによる取引の比率が高まっており、ニュースヘッドラインに過敏に反応する傾向が顕著です。
流動性の低下がボラティリティを増幅
ゴールドマン・サックスによると、S&P500先物市場では、売買高と実際の流動性の間に大きな乖離が見られ、これが値動きの激しさを助長していると分析されています。このような状況下では、通常の価格調整が行き過ぎる傾向があり、「売られ過ぎ」と「買い急ぎ」の双方が市場に現れやすくなります。
利下げ観測強まる中でFRBの対応は慎重
市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を早期に引き下げるとの観測が再浮上していますが、FRB内部では慎重な姿勢も見られます。サンフランシスコ連銀の見解としては、現在の経済環境では利下げを急ぐ必要はないというスタンスが示されています。シカゴ連銀からは、現在の貿易政策が予想以上に大きな影響をもたらしているという認識も聞かれました。
投資家動向と今後の見通し
バンク・オブ・アメリカのデータによると、先週は個人投資家、機関投資家、ヘッジファンドがいずれも米国株を買い越しており、流入額は80億ドルに達しました。これは米国株式市場に対する一定の期待感が残っていることを示しています。
しかし、ブラックロックは今後3カ月の見通しを「ニュートラル」に引き下げ、ゴールドマン・サックスも長期的な景気後退のリスクを背景に弱気相場入りの可能性を指摘しています。
市場は引き続き方向感を欠く展開に
現在の相場環境は、単なる短期的な調整というよりも、「構造的な政策リスク」が根底にあると考えられます。投資家にとっては、今後の政策動向を見極めることが不可欠であり、短期的な価格変動に惑わされない冷静な判断が求められます。