今週の金曜日、4月11日の市場開始前にアメリカの主要金融機関であるJPモルガン・チェース(JPM)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)、モルガン・スタンレー(MS)が1〜3月期の決算発表を予定しています。国際貿易の不透明感や関税政策に端を発した株式市場の大幅な下落の直後であるため、今回の決算は注目度が高まっています。
4月4日の米国の株式市場では、S&P500指数が5.97%、ダウ工業株30種平均が5.50%、ナスダック総合指数が5.82%下落しました。金融セクターもこの混乱の影響を大きく受けており、銀行株は深刻なダメージを受けています。
1〜3月期の業績は比較的堅調か
今回の市場の動揺の多くは、3月31日の第1四半期末以降に起きたものであり、四半期中の米経済は比較的堅調に推移していました。そのため、大手銀行の第1四半期決算は年初の予想を上回る健全な内容になると見られています。
JPモルガン・チェースの1株当たり利益(EPS)の市場予想は、年初の4.56ドルから4.64ドルへと引き上げられています。前年同期は4.44ドルで、売上高は前年の419.3億ドルから439.1億ドルへの増加が見込まれています。
ウェルズ・ファーゴは、EPSが1.20ドルから1.23ドルへの上昇が予想されています。売上高は前年の208.6億ドルからわずかに減少し、207.6億ドルになる見通しです。
モルガン・スタンレーのEPSは2.17ドルから2.23ドルに上方修正されており、前年の2.02ドルからの増加です。売上高も前年の151.4億ドルから166.4億ドルへ増加が見込まれています。
市場の不安と銀行株のバリュエーション
先週は、株価の急落と関税による市場不安の影響で、金融株全体が売り込まれました。トゥルイスト証券のアナリストであるジョン・マクドナルド氏は、マクロ経済への懸念が銀行株に完全に波及しており、2020年以来最悪の週となったと述べています。
JPモルガンのアナリストは、米国がリセッションに陥る可能性を60%と見積もっており、多くのアナリストが業績見通しを慎重に見直し始めています。特に貸出利益(純金利収入)に対する期待は控えめになると見られます。
他の主要銀行の決算見通し
ゴールドマン・サックス(GS)は4月14日に決算発表を予定しており、EPSは前年の11.60ドルから12.40ドルに増加すると予想されています。売上高は149.3億ドルと、前年の142.1億ドルを上回る見通しです。
バンク・オブ・アメリカ(BAC)は4月15日に決算を予定しており、EPSは前年の0.76ドルから0.82ドルへと増加が予想されます。ただし、年初の予想である0.86ドルからは下方修正されています。売上高は前年の258.2億ドルから270.1億ドルへの増加が見込まれています。
シティグループ(C)も15日に発表予定で、EPSが1.86ドルと、年初の1.89ドルからは若干下回るものの、前年の1.58ドルからは増加する見通しです。売上高は前年の211.0億ドルから212.9億ドルに増加すると予測されています。
今後の注目ポイント:貸出成長とリスク備蓄
KBWのアナリストであるクリストファー・マグラッティ氏は、銀行株のバリュエーションがすでに「後期サイクル」寄りにシフトしており、特に関税発表後は強気な見通しが後退していると指摘しています。大手銀行は、融資の成長見通しについて以前の予想レンジの下限を示す可能性もあるとみられます。
また、JPモルガン・チェースのCEOであるジェイミー・ダイモン氏が、地政学的リスクに対して慎重な姿勢を保ちつつ、将来的な景気減速に備えた引当金の積み増しについてどのような発言をするかも注目されています。
まとめ:銀行株の見通しと投資家の心構え
現在の不透明な経済環境下において、米国の大手銀行は依然として収益の多様性を活かし、「なんとか切り抜ける」力を持っていると評価されています。しかしながら、市場の不安定さや政策の変動性を考慮すると、投資家は今後の見通しに対して慎重な姿勢を持ち続ける必要があります。
今後発表される決算内容や経営陣のコメントが、米国経済および株式市場の方向性を占う重要な手がかりとなるため、引き続き注視していくことが重要です。