2025年4月3日、アメリカの株式市場は2020年以来となる大幅な下落に見舞われました。S&P500種株価指数(SPX)は4.8%下落し、ナスダック総合株価指数(COMP)は約6%下落しました。今回の急落は、ドナルド・トランプ大統領による全世界的な関税引き上げの発表がきっかけとされています。
こうした市場の急変時には売りが先行するのが一般的ですが、今回は個人投資家の行動に大きな変化が見られました。
J.P.モルガンが捉えた個人投資家の大規模な資金流入
J.P.モルガンによりますと、4月3日に個人投資家が株式およびETFに投じた資金は合計で47億ドルに上り、これは過去10年間で最大規模の1日における資金流入額となりました。このデータは、同社が収集した実際の取引フローを基にしたものです。
特に注目されるのは、投資が個別株とETFにバランスよく分散されていた点です。これは、個人投資家が単一銘柄への集中ではなく、リスクを管理した戦略的な投資行動を取っていることを示していると考えられます。
中でも、エヌビディア(NVDA)への買いが最も多く、9億1,300万ドルの買い越しとなりました。市場が不安定な中でも、テクノロジー分野に対する信頼が依然として強いことがうかがえます。
2020年との比較が示す投資家心理の変化
J.P.モルガンは、今回の買い行動を2020年3月のコロナショック時と比較しています。当時、株式市場が急落した際には多くの個人投資家が資産を売却していましたが、今回は大きく異なりました。
同社の分析では、2020年の投資家フローと市場パフォーマンスには約75%の相関が見られたとのことです。これと比較して、現在の投資家は市場が下落した際にも積極的に資金を投入している傾向が強まっていると述べています。
このような違いから、個人投資家の心理や市場に対する理解が数年間で大きく進化していることが読み取れます。
インタラクティブ・ブローカーズでも見られた活発な取引
証券会社のインタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)も、4月2日の関税発表を受けて、取引量が急増したことを明らかにしています。同社によれば、顧客の株式注文数は前週比で16%増加し、オプション取引は44%も増えたといいます。
同社のチーフ・ストラテジストであるスティーブ・ソスニック氏は、顧客の多くが下落を「買いの機会」と捉え、特定の銘柄へのエクスポージャーを積極的に増やしているとしています。これは単なる一時的な反応ではなく、明確な意図に基づく行動であると考えられます。
長期視点がもたらす冷静な判断力
J.P.モルガンによると、4月3日時点で個人投資家のポートフォリオは年初来で12.9%の下落となっていました。これはS&P500種株価指数の8.3%の下落を上回るものの、ナスダック総合株価指数の14.3%の下落よりは軽微です。
このようなデータからは、個人投資家のポートフォリオにテクノロジー銘柄が多く含まれている可能性があり、ETFを活用することである程度のリスク分散が実現されていることがわかります。
投資アドバイザーであるダン・イーガン氏(ベターメント社)は、個人投資家はプロのファンドマネージャーと異なり、短期的な成績に追われる必要がないことから、長期的な視野を持って市場に向き合うことができると述べています。
また、同氏は、短期的な下落時においても冷静さを保つためには、一定の現金を保有しておくことが精神的にも効果的であると指摘しています。これにより、ポートフォリオの変動に対するストレスを軽減し、合理的な判断が可能になるとしています。
下落相場は恐れるべきか、それとも活かすべきか
4月4日も株価は下落を続け、S&P500は昼の時点でさらに4%の下落となりました。こうした中、4月3日に買いを入れた投資家は短期的に評価損を抱える可能性があります。
それでも、株式投資における本質は長期的な視野に立つことであり、一時的な価格の下落は必ずしも悪材料とは限りません。むしろ、過去の市場の動きから見ても、こうした局面での冷静な買いは後に大きなリターンをもたらす可能性を秘めています。
今回の動きは、個人投資家の行動において新たな時代の到来を感じさせるものです。市場が不安定であるからこそ、自らの投資戦略を見直し、長期的な視点とリスク管理を両立させることが今後の鍵となります。