2025年4月、米国株式市場では「ブラックサーズデー」「ブラックフライデー」と形容されるほどの急落が起きました。背景にはトランプ大統領による突然の「解放の日」関税発表があり、金融市場は再び政策リスクに揺れています。
この展開は、1929年に始まった世界大恐慌の引き金となった株式市場の暴落との類似点を感じさせるものです。バロンズ(Barron’s)が4月4日に公開した記事では、現在の状況がいかに1929年と重なり合うかを、歴史的文脈から読み解いています。
歴史的な大暴落と関税政策のリンク
1929年10月の株式市場暴落では、わずか2日間で市場価値の約25%が失われました(出典:ニューヨーク証券取引所の過去データ)。ダウ工業株30種平均はその後3年間で90%もの下落を記録し、その影響は世界中に波及しました。
当時の米国政府はスムート・ホーリー関税法を通じて関税を引き上げ、国内産業を保護しようとしましたが、結果的に各国の報復関税を招き、世界貿易の崩壊と大恐慌の深刻化を招いたと広く分析されています。バロンズはこの歴史を踏まえ、現代の市場においても同様のリスク構造が再現される可能性を指摘しています。
楽観主義の落とし穴と市場の過信
1929年の暴落直前、多くの経済学者や投資家は「株価は永続的に高い水準に達した」と信じていました。当時の著名な経済学者であるアーヴィング・フィッシャーも、暴落の1週間前にそのような見解を示していたことで知られています(出典:経済史文献『Where Are the Customers’ Yachts?』より)。
このような市場の過信は、現代の米国市場にも通じる部分があります。2020年代初頭から続くテクノロジー株主導の強気相場、生成AIブーム、そして低金利政策による資産価格の膨張が、投資家のリスク認識を鈍らせてきました。
関税という外的ショックが引き金となり、市場が突如として現実に直面する構図は、決して過去の話ではないと考えられます。
トランプ大統領の「新・関税理論」に市場はどう反応するか
トランプ大統領は今回の発表において、関税こそが景気後退を防ぐ手段であり、むしろ過去の大恐慌は関税が十分でなかったから起きたと主張しました。同大統領の見解では、1913年に導入された所得税制度が米国経済を歪めた根本原因であり、消費に課税する関税の方が公正だとしています。
こうした考え方に対しては、経済学者の間でも評価が分かれています。バロンズによれば、歴史的事実として高関税政策が世界貿易を縮小させたことには多くの経済学的合意が存在し、それが各国の経済的孤立を招いたという見解が依然として支配的です。
市場はこの「新・関税理論」に対して極めて敏感に反応しており、週明けの動きが注目されています。
投資家が取るべき視点とは
過去の暴落では、J.P.モルガン(JPM)などの大手金融機関が市場の下支えを試みたものの、一時的な反発にとどまりました。1929年のブラックマンデーとブラックチューズデーには、それぞれ12.8%、11.7%という歴史的な下落率を記録しました(出典:米国株式市場アーカイブデータ)。
一部の専門家は、現在の市場でも同様の「政策ショック→一時反発→再下落」というサイクルに陥る可能性を警戒しています。関税、金利、政治的リスクといったファクターが複雑に絡み合うなかで、短期的な反発だけをもって楽観するのは危険だという見方もあります。
歴史に学び、今を読む
1929年の教訓が示すのは、暴落そのものよりも、その後に訪れる経済と社会への影響です。政策の誤りや市場の過信が、どれほど広範囲にわたる混乱を招くかを我々は知っています。
関税は、単なる貿易政策ではなく、マーケットの信認を大きく揺るがす要因にもなり得ます。過去の出来事を振り返りつつ、現在の状況を冷静に読み解くことが、投資家にとって極めて重要な局面といえます。