トランプ大統領が発表した新たな関税政策を受けて、米国株式市場は再び不安定な動きを見せています。この動きは、投資家心理の不安定さだけでなく、政策による実体経済への影響を反映していると考えられます。今回は、米投資情報メディア「バロンズ」に掲載されたアドバイザーたちの声をもとに、今後の投資方針について考察してみたいと思います。
「ボラティリティは恐怖」の象徴:市場の不安心理が浮き彫りに
金融アドバイザーたちは、今回の関税措置に対して、顧客が通常よりも大きな不安を抱いている様子だと述べています。特に中小企業の経営者などは、これが自社の利益にどう影響するかを真剣に懸念しているとのことです。
ボラティリティの上昇がそのまま「恐怖指数」と呼ばれるVIXの上昇にも繋がっており、投資家のリスク回避姿勢が強まっているのは、過去のパターンからも明らかです。実際、シカゴ・オプション取引所のVIXは関税発表後に急上昇を見せ、市場全体の警戒感を浮き彫りにしました(出典:Cboe Global Markets)。
このような局面では、短期的な市場の動きに過度に反応せず、リスク分散を重視した戦略が重要となります。
債券とプライベート投資の重要性が再評価される背景
金融の専門家たちは、株式市場の乱高下に備え、固定収入型資産や非公開市場投資(プライベート・エクイティなど)の比率を高めていると伝えられています。
この方針の背景には、「質への逃避(flight to quality)」という市場原理があります。つまり、不確実性が高まると、安全資産と見なされる米国債などに資金が流れやすくなるのです。2025年4月3日時点での米10年債利回りは一時的に下落傾向を示しており、これは投資家のリスク回避行動が強まっている証拠といえるでしょう(出典:U.S. Department of the Treasury)。
また、株式市場の価格変動に影響されにくい資産として、プライベート投資や構造化商品への関心も高まっています。これらの資産は流動性に劣る一方で、長期的には安定収益が見込まれ、伝統的資産との相関も低いため、リスク分散の観点からも有効です。
海外市場への分散投資は現実的な選択肢か?
一部のアドバイザーは、米国株の先行きに懐疑的な姿勢を取りつつ、欧州や中国といった海外市場に投資機会を見出しています。欧州中央銀行(ECB)による金融緩和政策や、中国政府による景気刺激策の可能性は、現地の株式市場を支える要因になると考えられています。
実際、2025年に入ってからのユーロ圏製造業PMIや中国の輸出統計などを見ても、底打ちの兆しが見え始めています(出典:Eurostat、中国国家統計局)。こうした外部市場へのアクセスを考えることは、今後のポートフォリオ構築において避けて通れないテーマです。
株式市場は買い場か?それとも慎重姿勢を貫くべきか?
関税政策を受けて株価が下落した今、投資家の間では「押し目買い」のタイミングを計る声も上がっています。特に、アマゾン(AMZN)などの大手テクノロジー株に割安感が出ているとの見方もあります。しかし、現在の市場状況を「絶好の買い場」と単純に捉えるべきではないかもしれません。
なぜなら、関税問題は企業業績だけでなく、為替、消費、サプライチェーンなど多方面に影響を及ぼす可能性があるからです。特にインフレの加速リスクを伴う関税措置は、企業の利益率を圧迫し、株価のリバウンドを遅らせる要因となり得ます。
そのため、ここでは「質へのシフト」と「分散投資の徹底」がキーワードになります。成長株一辺倒ではなく、バリュー株や配当株、さらには債券やプライベート資産といった幅広いアセットクラスを組み合わせる柔軟な姿勢が求められます。
まとめ:不確実性の時代における投資家の心構え
今回の関税政策は、トランプ大統領の選挙期間中から続いている「アメリカ優先」路線の延長と見ることができます。マーケットは政策の予測不可能性に神経を尖らせており、しばらくの間は不安定な状態が続く可能性があります。
そのような環境下においては、「短期的な利益を追わない」、「感情的な売買を避ける」、「長期的なポートフォリオ戦略を徹底する」という基本姿勢がより重要になります。金融政策や地政学的リスクが複雑化する今こそ、アドバイザーや市場データを参考にしながら、自分なりの戦略軸を持つことが、安定的な資産形成への第一歩となるのではないでしょうか。