アメリカの大手証券会社であるシティグループのアナリストは、人工知能(AI)機能を強化したSiriのアップグレードをめぐる投資家の期待がリセットされた今、アップル(AAPL)の株価が最大で300ドルまで上昇する可能性があると指摘しています。
この分析を主導するアティフ・マリク氏らのチームは、アップル株に対して「買い」のレーティングを継続し、目標株価を275ドルと再提示しました。4月1日の米国市場で株価は222.55ドルで取引されており(米国東部夏時間13:50現在)、目標株価までは24%の上昇余地があることになります。
SiriのAI化が延期された影響と今後の展望
アップルは昨年6月の開発者向けイベント「WWDC」で、AIを搭載した新しいSiriをプレビューとして発表しました。その後、AI強化版Siriは2025年3月末にリリースされたiOS 18.4とともに正式に登場するのではないかという期待が高まっていました。
しかし実際には、Apple Intelligenceの対象言語が拡張されるなど一部の進展はあったものの、AI搭載のSiriはまだ一般公開には至っていません。この延期を受けて、株価は一時的に下落し200ドル付近まで落ち込む場面も見られました。
それでもシティのアナリストは、このような展開はそれほど驚くことではないとしています。現時点で明確なタイムラインは示されていないものの、次回の2025年5月の決算発表時にアップルがSiri関連の計画やスケジュールについて新たな説明を行い、投資家の期待を再調整する可能性があると見ています。
2026年に大きなSiriアップデートが登場か
シティの予測によれば、もし開発が順調に進めば、2026年のiOS 19のリリースサイクルで、画面上の情報認識、個人のコンテキスト把握、アプリとの深い連携といった機能を備えた「より高度なSiri」が登場する見通しです。
さらに2026年から2027年にかけて、Siriは本格的なAIアシスタントとしての地位を確立し、アップルの製品価値を大きく引き上げる要因になるとしています。
強気シナリオでは株価300ドルも視野に
アナリストの強気シナリオによれば、アップルの収益と利益率がモデル想定を上回る場合、株価は300ドルに到達する可能性もあるとしています。
シティは、275ドルの目標株価は2027年の予想一株当たり利益(EPS)の30倍に相当し、これは過去の水準に対して約20%のプレミアムがついている計算です。このプレミアムは、Apple Intelligenceの段階的導入、利益率の向上、収益構成の進化、強固なバランスシートなどを織り込むために必要であると説明されています。
株価上昇の障壁となるリスク要因
一方でリスク要因も存在します。需要環境の悪化や、アメリカと中国の間の地政学的緊張が高まることで、アップルのサプライチェーンに影響が及ぶ可能性があります。
特に、同社が台湾および中国本土のサプライヤーへの依存度が高い点は注意が必要です。こうしたリスクが現実化した場合、株価上昇にブレーキがかかる可能性があります。
アナリストの評価は依然として強気
調査会社ファクトセットによると、アップル株に対するアナリストの評価は依然として前向きです。同社をカバーする51人のアナリストのうち、31人が「買い」または「アウトパフォーム」、14人が「ホールド」、6人が「売り」と評価しています。
AIによる革新が進む中、アップルの次の一手がどこに向かうのか、今後の動向が注目されます。特に、SiriのAI進化がどのように実現されるかは、アップル株の中長期的な成長を見極めるうえで大きなカギとなります。
*過去記事はこちら アップル AAPL