TSMCとして知られる台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)は、次世代チップ製造において大きな一歩を踏み出しました。同社は3月31日、台湾のFab 22で主要な建設マイルストーンを達成したことを祝う式典を開催しました。このイベントには主要サプライヤーも参加し、TSMCの2ナノメートル(nm)プロセス技術の順調な進展を示す場となりました。
このFab 22工場は、2025年下半期より顧客向けに2nmチップの量産を開始する予定です。TSMCの共同最高執行責任者である秦永沛氏は、「本日の2nm生産能力拡大式典は、世界の半導体技術開発において重要な意味を持ちます」と述べました。
テクノロジー株全体が軟調、TSMCの株価も影響を受ける
3月31日の米国市場ではテクノロジー株が全体的に下落しており、TSMCの米国預託証券も取引開始直後に1%下落しました。ただし、これは市場全体のトレンドに伴うものであり、TSMCの業績や技術開発への懸念によるものではありません。
AIチップ製造でリーダーの地位を確立するTSMC
TSMCは、ハイエンドな半導体製造において世界をリードしています。特にエヌビディア(NVDA)のAI向け半導体や、アップル(AAPL)のiPhone向けチップ、クアルコム(QCOM)のモバイルチップセット、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の製品など、重要な顧客企業向けに製造を行っています。
AIやスマートフォン、データセンターといった分野において、TSMCの製造技術は極めて重要な役割を果たしています。
2nm技術で大幅な性能向上と省電力を実現
TSMCによると、新しい2nmプロセス技術は、前世代のN3E技術と比較して、同じ消費電力で10〜15%の性能向上、または同じ性能で25〜30%の消費電力削減を実現するとのことです。これは、スマートフォンやデータセンターなど高性能かつ省電力が求められる分野において、大きなアドバンテージとなります。
TSMCは、2nmチップの量産開始から5年以内に、この技術を搭載した製品が世界市場で2兆ドル規模の売上を生み出すと予測しています。
米国での大型投資計画も進行中
3月初め、TSMCの最高経営責任者である魏哲家氏は、アメリカでの投資をさらに1000億ドル拡大する計画を発表しました。この資金は、アリゾナ州における3つのチップ工場、2つの先進的なチップパッケージング施設、そして研究開発センターの建設に充てられます。
これにより、アメリカへの総投資額は従来の650億ドルと合わせて1650億ドルとなります。これはTSMCが米国内でのプレゼンスを大幅に強化し、地政学的リスクを分散する狙いを持つ戦略の一環です。
台湾が引き続き最先端技術の中心に
TSMCは、アメリカにおける2nmチップの製造開始時期についてはまだ明らかにしていません。現時点では、最高の半導体製造技術を必要とする顧客は、引き続き台湾の製造施設を利用する必要があります。これにより、台湾は世界の最先端チップ製造の中心としての地位を維持し続けることになります。
*過去記事はこちら TSMC