米国の半導体大手エヌビディア(NVDA)の株価が、3月の取引を14.4%安で終えました。これは2022年9月以来となる大幅な月間下落であり、当時の19.6%の下落に次ぐ水準です。3月31日の取引でも下落基調が続き、ダウ工業株30種平均(DJIA)構成銘柄の中で、3番目にパフォーマンスの悪い銘柄となりました。
2022年の急落時は、パンデミック期の半導体需要の急増に伴う在庫過多と、仮想通貨市場の変動による影響が主因でした。一方、今回の下落には異なる要因が重なっています。
中国企業のAIに対する懐疑的な見解と米国の輸出規制強化
エヌビディアの株価に影響を与えた一因は、中国企業による人工知能(AI)に関する懐疑的なコメントです。これにより、AI分野における将来的な需要に対する不透明感が市場に広がりました。また、米国内でのAIデータセンター建設の高コスト化や、米政府による対中輸出規制の強化も、収益見通しに対する懸念を高めています。
特に、グラフィックス処理装置(GPU)の中国向け販売において、制限が強化される可能性があることは、同社の成長シナリオに影を落としています。
コアウィーブのIPO低調が市場心理に影響
さらに、エヌビディアと提携関係にあるAI専用データセンター開発企業コアウィーブ(CRWV)の新規株式公開(IPO)が期待を下回る結果となったことも、ネガティブな材料となりました。コアウィーブはIPO価格を当初予定より引き下げた上、上場後の株価も低調に推移しています。
D.A.ダビッドソンのアナリスト、ギル・ルリア氏は「エヌビディアが支援したにもかかわらず、コアウィーブのIPOが振るわなかったことは、今後の資金調達能力に不安を与えており、同社がエヌビディア製品を購入し続けられるかどうかに影響する」と指摘しています。
AI需要の一服と投資対効果の精査が進む
エヌビディアはAI革命の先頭を走ってきましたが、その成長にも転換点が訪れつつあります。ルリア氏は2月の決算後に「これ以上の上昇は難しい」とのタイトルでレポートを発表しており、短期的な需要は強いものの、企業がAI投資の費用対効果をより厳しく見極めるようになると予測していました。
実際、データセンター向けAI計算能力の構築には莫大なコストがかかっており、企業がROI(投資収益率)を重視する中で、エヌビディアの需要が徐々に鈍化する可能性も意識されています。
フィラデルフィア半導体指数との関係
2022年には、半導体業界全体も低迷しており、フィラデルフィア半導体指数(SOX)は年間で35.8%の下落を記録しました。今回のエヌビディアの動きは、当時と同様に、業界全体の調整局面を示唆する可能性があります。
31日の取引では、S&P500(SPX)の中で最も活発に取引された銘柄となったエヌビディアですが、株価は1.2%下落しました。AI市場におけるリーダーとしての地位を維持できるかどうかが、今後の同社の株価動向に大きな影響を与えることになります。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA