アルファベットに迫る「コダック化」の危機?AI時代に生き残れるか

テクノロジー業界において、「ディスラプション(破壊的革新)」は避けられない変化であり、投資家にとっては大きなリスク要因です。過去を振り返れば、ラジオはテレビに、固定電話は携帯電話に、そして折り畳み式携帯電話が主流だったフリップフォンはスマートフォンに置き換わってきました。

そして今、人工知能を活用したチャットボットが、インターネット検索の王者であるアルファベット(GOOGL)の独占を揺るがしつつあります。

アルファベットに迫る「コダック・リスク」

メリアス・リサーチのアナリストであるベン・ライツェス氏は、現在の混乱がグーグルの親会社であるアルファベットを「この世代のコダック」に変えてしまう可能性があると警告しています。コダックはかつて写真業界を支配していましたが、デジタルカメラの台頭により大きな打撃を受け、2012年には破産保護を申請しました。

コダックは1997年のピーク時、時価総額が約300億ドルに達し、年間売上高は約160億ドル、営業利益は20億ドル近くに上っていました。現在の市場価値は約5億ドルにまで下がり、2024年の売上高は10億ドル、営業利益はゼロという厳しい状況にあります。

グーグル検索は過去のものになるのか?

ライツェス氏は、「グーグルする(検索する)」という動詞の座を、他のAIツールが脅かしつつあると指摘しています。実際、子供たちの中には「ジェミニでレポートを書く」という表現を使うよりも、「ChatGPTで調べる」ことを自然に受け入れている例も増えています。広告のノイズがなく、即座に答えを得られることが利便性につながっているのです。

ただし現時点では、グーグルの検索ビジネスに大きな変調は見られていません。ライツェス氏によれば、その影響は2026年以降に本格化する見込みです。

アルファベットの自己変革とその評価

ある意味、アルファベットはすでに自らを変革しつつあります。広告依存型のビジネスから、AIツールのサブスクリプションサービスへと軸足を移しており、「Google One」の加入者はすでに1億人を超えています。

ニュー・ストリート・リサーチのアナリスト、ダン・サーモン氏は、毎月10億人以上のグローバルユーザーが「ジェミニ」のAIサマリーを利用していると報告しています。これは、多くのAIスタートアップ企業の実績を大きく上回るものです。

株価評価と投資家心理への影響

「コダックのようなシナリオは極端だ」との意見もありますが、ライツェス氏は株価評価に及ぼす心理的影響に注目しています。1998年のコダックの株価収益率(PER)はピークを迎えましたが、わずか3年後には7倍以下にまで下落しました。

アルファベットのPERは2020年のピーク時から約40%下がっており、現在はおよそ18倍と見られています。この水準は、ChatGPTがリリースされた2022年とほぼ同じです。

今後、AIチャットボット競争がさらに激化すれば、PERの上昇だけに頼った株価の押し上げは難しくなります。株主リターンは、利益成長、資本還元、そして戦略的な意思決定から生まれる必要があります。

今後の注目イベントとアナリスト評価

投資家にとっての次の注目イベントは、4月9日に開催される「グーグル・クラウド2025」の開発者会議です。この場では、AI技術の進展や、最近アルファベットが買収したサイバーセキュリティ・プラットフォーム「Wiz」に関する情報が発表される見込みです。

アナリスト評価は分かれています。モンネス・クレスピ・ハルトのブライアン・ホワイト氏は「ホールド(中立)」と評価し、目標株価は設定していません。ライツェス氏も「ホールド」とし、目標株価を173ドルに設定。一方、サーモン氏は「買い」とし、目標株価を215ドルとしています。

現在、アルファベット株のアナリスト平均目標株価は約217ドルであり、2025年の推定利益に対するPERは約24倍となっています。一方、現時点の実際のPERは17倍前後とされています。

株価動向と市場の反応

アルファベットの株価は、3月31日の終値で154.64ドルを記録し、前日比で0.2%上昇しました。同日はダウ工業株30種平均も1%上昇し、相場全体が上向く展開となりました。

しかし、アルファベット株は2月の高値から約25%下落しており、AI主導の相場に対する疑念や、関税に関する懸念が重しとなっています。

*過去記事 アルファベット GOOGL

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