3月28日、イーロン・マスク氏がソーシャルメディアプラットフォーム「X(旧ツイッター)」を自身のAI企業「xAI」に売却したことが大きな話題となっています。この取引額は約330億ドルで、2022年にマスク氏がツイッターを約440億ドルで買収したことを考慮すると、Xの企業価値は上昇したと評価されています。
Xは、マスク氏がCEOとして就任してから広告主離れや混乱が続き、先行きが懸念されていました。しかし、今回の売却はその状況を大きく転換させる可能性を秘めています。
統合の目的:データとAIの融合による新たな価値創造
マスク氏はXの売却に関して、「xAIとXの未来は絡み合っている」とコメントしています。この統合により、xAIの高度なAI技術とXの膨大なユーザーベース、リアルタイムデータ、優秀な人材を結集することが可能になります。
「データ、モデル、コンピュート、ディストリビューション、そして才能を組み合わせることで、人類の知識を進化させるプラットフォームを創出できる」と語るマスク氏は、AI技術の社会実装を加速させる狙いがあります。
資金調達と企業価値の戦略的エンジニアリング
今回の売却は、単なる企業間の資産移動ではありません。XはxAIの10%の株式を保有していたため、相互出資構造によって、マスク氏は資本効率を高めながら事業間シナジーを実現しています。
また、X買収に際してマスク氏は巨額の負債を利用しており、今回のxAIによる買収ではこの負債も考慮されています。差し引きで見た評価額が330億ドルというのは、Xの企業価値が実質的に向上したことを意味します。
xAIの企業価値は800億ドルに到達
マスク氏によると、今回の取引はxAIの企業価値を800億ドルと評価しています。これは2024年11月時点の評価額500億ドルから大きく上昇したことになります。比較対象として、米オープンAIは3000億ドル規模の評価を受けており、今後xAIが競争力を高めることが期待されます。
マスク氏はxAIの約50%、Xの約80%を保有しており、今回の統合によりマスク氏の持ち株価値は650億ドル以上と見積もられています。
テスラやスペースXとの連携の可能性
マスク氏が保有するテスラ(TSLA)の株式は、ストックオプションを含めて1700億ドル以上の価値があります。また、宇宙開発企業スペースXは非公開市場で約1400億ドルと評価されています。これらの事業とxAI・Xとの連携によって、より一層の相乗効果が期待されます。
特にAI領域では、アルファベット(GOOGL)やオープンAIに対抗するための自社モデル構築が急務とされており、今回の統合はその布石となっています。
テスラ株主への影響
xAIによるXの買収が意味するのは、マスク氏がテスラ株を売却して他事業へ資本を注入する必要性が低くなるという点です。これはテスラ株主にとってもプラス要因となります。
ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブズ氏は「この統合はマスク氏がAIの中核プレイヤーになるための第一歩」と評価しており、テスラが将来的により大きな役割を担う可能性を指摘しています。
ソーラーシティの買収に続く戦略的統合
マスク氏が自社間で企業を買収するのは今回が初めてではありません。2016年にはテスラがマスク氏の別会社ソーラーシティを26億ドルで買収しました。この買収によって、テスラの自動車以外の事業、特に定置型蓄電システムなどの売上が拡大し、過去5年間で売上は約40億ドルから210億ドルへと成長しました。
今回のXとxAIの統合も、ソーラーシティ買収に匹敵するような事業革新となる可能性があります。