AIクラウド企業「コアウィーブ」がナスダック上場、IPO価格は想定下回るも市場の注目集める

2025年3月28日、急成長を遂げているAIクラウド企業「コアウィーブ(CRWV)」がナスダック市場に上場しました。IPO価格は1株あたり40ドルと、事前に示されていた47〜55ドルの想定価格帯を大きく下回り、初値は39ドルで取引を開始。初日の時価総額は約230億ドルとされています。

株式の発行数も当初予定から23%削減されており、今回の上場はAIバブルの実態やIPO市場の健全性を見極める材料として注目を集めました。

エヌビディアとの強固な関係、AI専業クラウド企業としての立ち位置

コアウィーブは、売上の100%をエヌビディア(NVDA)製のチップを活用したAIクラウドレンタル事業から得ている、純粋なAI専業企業です。今回のIPOにあたり、エヌビディアも2億5,000万ドル分の株式を取得しました。

同社の共同創業者で最高戦略責任者のブライアン・ヴェントゥーロ氏は、「今回の上場は、大手顧客の要求に応えるための戦略の一環」と述べ、「AI版AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を目指す」と明言。AI時代におけるクラウドインフラの中核を担う意欲を示しました。

売上は急拡大、だが構造的リスクも

2017年に暗号資産マイニング企業として創業した同社は、2018年の仮想通貨バブル崩壊後、AIクラウド分野に転換。2022年の売上は1,600万ドルに過ぎませんでしたが、ChatGPTの登場以降、AI需要が急増し、2024年の売上は19億ドルに達しました。第4四半期の成長ペースを基に試算すると、年間30億ドル規模の成長軌道にあります。

2024年の営業利益率は17%で、営業キャッシュフローは7億ドル(マージンは37%)と健全に見えますが、多額の前受け金が含まれている点には注意が必要です。

売上の77%が2社に依存、顧客集中リスクが鮮明に

2024年の売上のうち、62%は米マイクロソフト(MSFT)、次いでエヌビディアが大きな割合を占め、2社合計で77%に上ります。特にマイクロソフトはAzureクラウドの容量不足分をコアウィーブに委託しており、今後同社が自社インフラを増強した場合、影響を受ける可能性があります。

さらに2025年3月には、オープンAIとの契約も締結。契約総額は最大116億ドルに達し、同社のバックログ(契約済み受注残)は2024年末時点で150億ドル。そのうち80億ドルは2025〜2026年に売上計上される予定です。

高コスト構造と高金利負債が成長の足かせに

コアウィーブは資本集約型ビジネスであり、2024年末時点で120億ドル超の借入枠を保有。このうち79億ドルが既に実行済みで、平均金利は約12%。金利費用は3億6,100万ドルにのぼり、営業利益(3億2,400万ドル)を上回っています。

IPOによる資金調達額は15億ドルで、さらにオープンAIから3億5,000万ドルの株式購入も予定。2025〜2026年にかけて56億ドルの返済が控えており、まずは年内に満期を迎える10億ドルの高金利ローンが焦点となります。

設備投資とリース費用の負担も大きい

2025〜2026年には、11億ドルのリース料支払いが予定されています。加えて、2024年の設備投資(Capex)は前年比196%増の87億ドルに急増。これにより、顧客からの前受け金を除いた2024年のフリーキャッシュフローはマイナス80億ドルと、大幅な赤字を記録しています。

「テイク・オア・ペイ」契約で安定化狙うも柔軟性に課題

コアウィーブは、契約容量未使用でも違約金が発生する「テイク・オア・ペイ」契約を導入しています。契約期間は2〜5年、契約金額の15〜25%が前受け金として計上され、一定の収益安定化が見込まれます。しかし、導入には3カ月の期間を要するため、一部顧客にとっては柔軟性を欠く側面も残ります。

ガバナンス構造と株式流通量の少なさにも留意

上場されたのは1株1票のクラスA株ですが、経営陣や初期投資家が保有するクラスB株には10倍の議決権があります。その結果、少数株主による支配構造が維持される見込みです。

また、市場で流通している株式は全体のわずか9%と少なく、今後の株価変動は非常に大きくなる可能性があります。

コアウィーブ株は「AI相場」の試金石に

コアウィーブは、エヌビディアのAIチップ需要を背景に急成長した象徴的存在です。AIインフラへの需要が今後も拡大し続けるならば、同社は中長期的に大きな成長機会を享受できる可能性があります。

一方で、マイクロソフトや他のビッグテック企業がAIインフラ投資を縮小すれば、コアウィーブのような高コスト・高負債体質の企業は業績悪化のリスクを抱えることになります。2025年は、同社にとって「成長持続か、構造転換か」の分岐点となる年になるかもしれません。

*過去記事「コアウィーブがIPOへ!AIクラウド急成長企業の全貌と投資リスクを徹底解説

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