エヌビディアの株価が割安でも投資家が戻らない理由とは

2025年に入り、エヌビディアの株価は年初来で約17%下落しており、過去数年と比較しても割安な水準で取引されています。BofA証券のアナリストであるヴィヴェック・アリア氏は、現在の状況を「特に魅力的な投資機会」と捉えており、テクノロジー分野でもっとも高品質でユニークな企業のひとつと評しています。

それにもかかわらず、多くの投資家が買い戻しに慎重な姿勢を保っています。その背景には、地政学的リスクに対する懸念が色濃くあります。

AI半導体への輸出規制がカギに

2024年末にバイデン政権下で導入されたAI拡散ルール(Artificial Intelligence Diffusion Rules)が、特に中国を含む複数の国に向けたAI半導体の輸出を制限しています。このルールの実施期限は2025年5月中旬とされており、その動向がエヌビディアにとって大きな分岐点となっています。

アリア氏は、5月15日までにトランプ大統領がこの規制を緩和するかどうかが明らかになり、地政学的な不透明感がある程度払拭されると見ています。それにより、株価が回復に向かう可能性があると指摘しています。

同様の事例として、過去に半導体製造装置関連の企業が中国リスクによって株価が下落した後、設備投資に関する具体的な情報が出たことで相対的な回復を見せたことも引き合いに出されています。

投資家心理は依然として冷え込んだまま

一方で、米国みずほ証券のテクノロジーおよびメディア部門のセールススペシャリストであるジョーダン・クライン氏は、現在のAI関連半導体およびハードウェア株に対する投資家のセンチメントは、ここ1年で最悪レベルにあると述べています。

「過去4週間の急落を踏まえると当然かもしれないが、今のようなセンチメントが続く限り、エヌビディアの株価が1日で7%下落しても、PER(株価収益率)が20倍まで下がっても、誰も買おうとしない」と、クライン氏は指摘しています。

実際、3月初めの取引では、エヌビディアの株価が一時104.77ドルまで下落。昨年夏には100ドル付近での取引が続いており、投資家の間では再び100ドルを割り込む「リテスト」への懸念が広がっています。

死の十字出現で長期的な下落トレンドの兆しも

先週、エヌビディアの株価チャートには、3年ぶりに「デス・クロス(死の十字)」と呼ばれるテクニカル指標が現れました。これは、短期移動平均線が長期移動平均線を下回る現象で、長期的な下落トレンドの前兆とされています。

現在、エヌビディアの株価は、来年の予想売上に対して約20倍という水準で取引されており、過去の平均的なフォワードPERである36倍と比べて大幅に割安です。

中国市場への逆風も懸念材料に

さらに、地政学的な要因として中国の政策変更もあります。中国は独自の輸入規制を進めており、新たな省エネルールの導入により、エヌビディアのチップ販売がさらに難しくなる可能性が出てきました。

このように、割安なバリュエーションにありながらも、地政学的リスクとセンチメントの悪化が重なり、エヌビディア株への投資を躊躇する状況が続いています。投資家にとっては、今後の政策動向と中国市場の環境変化が、再びポジティブな材料となるかが注目されるポイントです。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG