2025年の米国株市場において、いわゆる「マグニフィセント・セブン」の中で唯一プラス圏にある銘柄がメタ・プラットフォームズ（META）です。その他の主力ハイテク銘柄が軒並み下落する中、メタは粘り強く堅調な株価を維持しています。
マイクロソフト（MSFT）は年初来で7.5％下落、アマゾン・ドット・コム（AMZN）は8.2％下落、アップル（AAPL）は10.6％下落、アルファベット（GOOGL）は14.3％下落、エヌビディア（NVDA）は17％下落、テスラ（TSLA）は32.4％の大幅下落となりました。そんな中、メタは唯一2.9%の上昇とプラス圏内に踏みとどまっています。
ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによると、メタがこの6銘柄を年初来で上回ったのは、これまで2016年のみです。2025年3月27日時点で、ナスダック総合指数は7.8％下落しており、投資家は経済や政治の不確実性からリスクの高い資産から資金を引き上げています。
メタのAI戦略と広告事業が投資家の信頼を支える
メタは人工知能（AI）分野において積極的な投資を行っており、他の大手テック企業と同様に、数百億ドル規模のプロジェクトを進めています。特に、広告主向けにAIを提供することで、ユーザーの行動や嗜好を学習し、よりパーソナライズされた広告を届ける仕組みが収益成長を後押ししています。
2024年のメタの広告売上は1,600億ドルとなり、前年から22％増加しました。マイクロソフトの22％増、アルファベットの39％増と比較しても、メタの売上は60％の増加と際立っています。
証券会社モンネス・クレスピ・ハルトのアナリスト、ブライアン・ホワイト氏はリサーチノートで「メタはデジタル広告の成長トレンドの恩恵を受け、プラットフォームのリーチ拡大や生成AIでのイノベーションを推進するのに理想的な位置にある」と評価しています。同氏の目標株価は775ドルと設定されています。
株価推移とAIへの積極投資
3月27日の米国市場でメタの株価は602.58ドルとなり、1.37％下落しましたが、年初来で見ると依然としてプラス圏にあります。
AI分野への積極投資も評価されています。BofA証券のアナリスト、ジャスティン・ポスト氏は、メタが2025年に600億〜650億ドルの設備投資を計画しており、これはハイパースケーラー企業に匹敵するとしています。AIによる新たなサービス創出の可能性が、株価評価倍率を健全に保つ要因になると述べています。ポスト氏の目標株価は765ドルです。
メタの現在の株価は、今後12カ月間の予想1株当たり利益の23.5倍で取引されており、過去5年間の平均である21.4倍を上回っています。
TikTok問題と規制リスクも存在
一方で、規制面のリスクもメタにとって無視できない要素です。2025年4月には、米連邦取引委員会（FTC）が、フェイスブックによるインスタグラムとWhatsAppの買収を含めた「反競争的行為」に関して提訴しており、その裁判が控えています。
また、TikTokも依然として競争上の懸念材料です。若年層のユーザーが多く、メタにとっての主要な競合アプリですが、米国政府はTikTokの親会社である中国のバイトダンスからの分離が実現しない場合、アプリを禁止する法案を可決しています。ただし、トランプ大統領はその禁止措置を2025年4月5日まで一時停止しています。
さらに、トランプ大統領はTikTokの売却に中国が同意すれば、対中関税の引き下げを行う意向を示しています。これにより、TikTok問題の行方は依然として不透明です。
景気後退リスクと広告依存モデルの脆弱性
デジタル広告は景気の変動に非常に敏感な分野であり、景気が悪化した場合には企業の広告支出が大きく減少する可能性があります。ホワイト氏も「広告主導のビジネスモデルは不況時に安全な避難場所とはなりえない」と指摘しています。
しかし、多くのアナリストはメタに対して強気の見方を維持しています。ファクトセットによると、カバーしている72人のアナリストのうち、62人が「買い」、8人が「ホールド」、2人が「売り」と評価しています。
今後の見通しと投資判断
メタ・プラットフォームズは、AI分野への巨額投資とデジタル広告の強力な成長に支えられ、マグニフィセント・セブンの中で唯一の好調銘柄として投資家の注目を集めています。規制や経済のリスク要因は残るものの、アナリストの間では将来的な成長への期待が依然として高い状況です。
今後の株価動向は、AI事業の進展とともに、TikTok問題や景気の動向、そして規制当局との関係が重要な要素となります。中長期的な視点での投資判断が求められる局面にあります。
＊過去記事 メタ・プラットフォームズ